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チームメイトB

「僕です!絶対に僕です!ネジは
またの機会にお願いします!」
「なんだそれは。オレだけ除け者というのは気に食わんな」

テンテンはリーとネジが言い合う姿を見てため息をつきました。また間に入って仲直りさせなくちゃいけないと思うと少し気が重くなりました。

「演習場でリーさんとネジさんがケンカしているので早く行ってください!」
テンテンはサクラからそう聞いて、たった今現場に駆けつけたところでした。
この広い演習場には他にも何組かの忍たちが修行に励んでいましたが、たまに出るリーの大声によって集中できないようでした。それに気付いたテンテンは慌てて二人の元にも駆け寄ります。


「ちょっと!二人ともやめなさいよ!」

テンテンが二人の間に割って入るとリーとネジはしかめ面でお互いにそっぽを向きました。
下忍だった頃、リーとネジは毎日といってもいいほどケンカをしていましたが、近頃はたまに意見が食い違うことはあっても、ここまであからさまにケンカをするのは久しぶりでした。

「一体なにがあったのよ。サクラが心配してわたしのところに来たのよ。他人に迷惑掛けるようなことしないでよね。リーはともかく、ネジまで大人気ないわよ!」

テンテンは二人の間に立って、右腕でリーの左腕を、そして左腕ではネジの右腕をそれぞれ組んで順番に二人の顔を覗き込み「一体なにがあったのよ」とケンカの理由を聞き出そうとしました。

しかしリーはサクラの名前を聞いて、「サクラさんが僕のことを心配してくれたんですか!」と嬉しそうに笑うので話が逸れてしまいます。そこでネジがふんと鼻を鳴らしました。

「やっぱりお前はサクラの方がいいだろう。今ならまだ間に合うかもしれないぞ。テンテンはオレに譲れ」
「な!サクラさんはもう諦めます!だからテンテンは譲れませんよ!」

この予想外な二人のやりとりにテンテンは固まってしまいました。それもそのはずです。どうやら二人はテンテンのことを取り合っているのです!

テンテンは慌てて二人の腕を離し、後ろに飛び退きました。なんだか急にとても恥ずかしくなってしまったのです。

「なんでわたしの前でわたしのこと取り合ってんのよ!どういうつもり!」
「テンテンは黙ってろ」
「そうです!テンテンに選ぶ権利はありません!」

大好きなチームがまさか自分が原因でこんな泥沼な状態になってしまうなんて!テンテンはとても悲しくなりましたが、でも少し自惚れました。しかしリーの「テンテンに選ぶ権利はありません」の言葉は聞き捨てることができません。
相変わらず自分を無視して言い合う男二人にテンテンはとうとう我慢が出来なくなりました。

「ちょっと!わたしには引っ込んでろっていうの!?ふざけんじゃないわよ!アンタたちなんてこっちから願い下げだっての!!」

テンテンは顔を真っ赤にして怒って、そう言い放つとプリプリと頬を膨らませて演習場を後にしました。
残されたリーとネジは茫然とテンテンの後ろ姿をみていました。

「行ってしまいましたね…。それにテンテンは何か勘違いしている様な気がします」
「リー、お前のせいだ。オレは追わないぞ」
「僕のせいですか!?ネジにだって責任ありますよ!!」

リーもネジもテンテンを怒らせることには慣れていましたが、その後のことはどうも慣れないのです。テンテンの機嫌を直すにはまず二人で謝りに行かなければいけません。つまり二人は仲直りするしかありませんでした。

テンテンは肩を落として里の中を歩いていました。ハァと大きなため息が出たちょうどその時、「テンテンさん!」とサクラが走ってこちらへ近づいてきました。

「サクラ!さっきはありがとね。やっぱり
あいつらケンカしてた」
「でしょ!それで、テンテンさんどっちにするか決まりました?」

サクラは嬉しそうに顔の横で手を組んでいます。

「サクラ、知ってたの?二人のケンカの理由!」

テンテンは顔を赤らめて言いました。

「もちろん!わかってますよ!どっちがテンテンさんを連れて行くかですよね。でも早くしないと!わたしはさっきサイと行って来ましたよ!」

サクラがえへんと胸を張っていうので、テンテンは怪訝な顔をしました。

「サイ?行ったってどこへ?」
「だから!甘栗甘!カップルで行くと新作のお団子が半額ってやつに決まってるでしょ!いのもチョウジと行くって!早くしないと完売しちゃいますよ」

甘栗甘とは木ノ葉の里で一番有名な甘味処です。テンテンもそこのゴマ団子が好きでよく利用するのです。それにしても、まさかリーとネジが新作団子の割引のためにテンテンを取り合っていたなんて。テンテンはちっとも想像していなかったこの展開に驚きを隠せませんでした。

サクラは「おいしかった〜」とかサイはナルトと違って少食だから彼の分も食べることができたと嬉しそうに語りました。
一方テンテンは肩を落としました。先ほど自惚れてしまった自分がすごく恥ずかしくて、新作団子のことなんて少しも考えられませんでした。

テンテンはサクラと別れて、しばらくぼーっと下を向いて里を彷徨っていました。先ほどの自分の言動が恥ずかしくて、どうもじっとしてられないのです。それでもいつまでもこうしてはいられない、もう家に帰ろうと決意し顔を上げると、なんと目の前には見慣れた濃い顔のリーと涼しげな顔をしたネジの姿が見えました。
リーは小走りでテンテンの元にやって来ました。ネジはその後ろからゆっくり歩いて来ました。

「テンテン、随分探しましたよ!お陰で甘栗甘は閉まってしまいました!」

リーは親指を立てて歯を輝かせました。

「あんたたちそんなにお団子好きだったっけ?割引なんかのためにわたしのこと取り合っちゃってさ…」

テンテンが頬を膨らませて言いました。

「僕はサクラさんがサイさんと行くと聞いたので、テンテンを誘って合流しようと思ったんです!折角ならばお団子好きのテンテンを誘えば、僕もテンテンも嬉しいし、お団子も割引き!一石三鳥です!でもそれをネジに言ったら自分だけ置いていかれることに腹を立ててしまって」
「当たり前だ。まさかリーがそこまで私欲に走るとはな」
「たまには僕の恋路を応援してくれてもいいと思うんですが」

リーとネジが再び口喧嘩を始めたので、テンテンは「バカ!」と言いました。
二人は目を丸くして、申し訳なさそうに口を噤みました。

「わたし、すごく驚いたのよ。ほんっと自分がバカみたい!」

テンテンは言葉こそ怒っているようでしたが、その表情はどこか悲しげだったので、リーとネジは顔を見合わせて頷きました。

「すみませんでした。でも聞いてください、テンテン」

リーがそっぽを向くテンテンの肩をポンポンと叩きます。
それでもテンテンはぷいとリーとは逆の方を向いてしまいます。

「オレもリーもテンテンに新作団子を食べさせてやりたいという気もあったんだ。だから、オレたちは私欲のためだけに言い合ってたわけではないんだ」
「ネジのいう通りです!僕たちはちゃんと君のことを考えていたんですよ!!」

リーもネジも身振り手振りを添えてむくれたテンテンを諭そうとします。

テンテンは二人の顔を横目でチラリと見ると、二人が自分のために一生懸命弁明している姿が見えました。こんなとき、テンテンはどんなに二人のことを怒っていても許さずにはいられないのです。

「わかったわよ!もう怒ってないから」

テンテンがそう言うと、リーは「流石テンテンです!」と言って、背中に隠していた甘栗甘の袋を差し出しました。

「仕方ないから定価で買って来た。好きなだけ食え」
「やっぱり男同士じゃカップルと認めてくれませんでした!僕はネジに女装も勧めてみたんですが」

リーはふざけてネジの肩に手を置いて笑いましたが、その手はネジにはたかれました。
そしてテンテンが笑うとリーもネジも笑ったので、結局三人は仲良く里の道の真ん中で笑顔で甘栗甘の新作団子を頬張り、めでたく仲直りしたのでした。

「こんなことなら最初から三人で行けば良かったんだよ」

テンテンが言うと、リーもネジも頷きました。テンテンの口元には団子の餡が付いていました。