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チームメイト@

木ノ葉隠れの里では忍者アカデミーを卒業すると、下忍三人、担当上忍一人の計四人で一班が編成される。
編成以降はその班ごとに上忍たちの指導のもと任務をこなし、各々が一人前の忍になるべく日々鍛錬し、またチームワークを磨いていくのが通例である。
例年どの班も基本的に仲が良く、良き仲間としてまたライバルとして切磋琢磨し、普段から班行動することが多い。
そんな木ノ葉の班編成だが、三代目火影の担当した班の教え子たちが伝説の三忍になったとか、三忍の一人である自来也の班に四代目火影となる波風ミナトが教え子にいたとか、そのミナトの教え子であるはたけカカシの教え子にミナトの息子の……と、木ノ葉の里の歴史と大きくリンクするところがあり、常に注目されるのである。
そして最近木ノ葉の里で話題になり始めたのが、第三班、通称ガイ班である。
里の忍たちいわく、注目すべきというよりはガイ班は変に目立つのだという。
そもそも担当上忍があのマイト・ガイだけに班員全員が燃えるような努力で任務に修行に大変熱心、忍といえど必要以上に日々ストイックに、情に厚く、常に全力で生活していると噂だ。
しかしこの噂にテンテンは物申す!
「わたしまでこんな風に噂されるなんて!絶対リーのせいだから!」
顔を真っ赤にして怒るテンテンがリーとネジを連れて演習場にやってきた。彼らは任務で里を出る日以外はガイ先生の教え通り熱い修行のために(とはいっても、先生の教えを守るのはリーだけだが)サバイバル演習場にやってくるのだった。しかし、この日のテンテンは修業どころではない様子である。
「待ってください、テンテン!!!一体なにがあったんですか!!!!」
「もー、うるさい!大きな声出さないでよー!」
「テンテン、お前も十分うるさい」
「だって、ネジ!きいてよ〜」
テンテンは里で“変に目立つガイ班の一員”と認識されていることが恥ずかしいのだという。というのも、くノ一たちの間ではガイ先生とリーの熱血っぷりは大変な笑い物になっているのだ。その噂の根源であるリーにテンテンは怒っているのだ。
「というわけで、私まで熱血女だと思われてるのよ!一緒にされたくないじゃない!!」
「そんなこと、いまに始まったことではないだろう」
「そうですよ、テンテン!そんなことを気にしているようでは、きみもまだまだ…」
「“修業が足りない”っていう気!?修業は関係ないでしょー!」
テンテンがリーに掴み掛かろうとするところを慌ててネジが止める。ネジに両腕を掴まれたテンテンは「放してよ」と大暴れし、一方のリーはアハハと笑っていた。
「とにかく、テンテンは悪目立ちするのが嫌なんだな。オレもそれには賛成だ。ガイ先生とリーは確かに、そうだな、暑苦しいところがあるからな」
「ネジ、そんな生温い表現じゃだめよ!いい、リー!あんた、行動も言動も暑苦しいから少し落ち着きなさいって言ってるの!」
ようやくテンテンが落ち着きを取り戻してきたところで、三人はテンテンの悩みについて冷静に話し合うことにした。ネジが腕を組んで、リーとテンテンの間に立ち事を進めようとするが、テンテンはまだ少々興奮気味である。
「つまり、ボクらが変に目立たないためにはどうすればいいか、ということですよね!!!!」
「ちょっとリー!そんなに大きな声出さないでよ!!みんな見てるでしょ!!!」
「おい、だからテンテン、お前も…」
「テンテンはボクに直して欲しいところがあるということでしょうか!遠慮せず言ってください!!努力で直してみせます!」
リーは両拳を顔の前でぐっと握り、テンテンに言う。
「直して欲しいところ?そんなのいつも言ってるでしょ!」
テンテンは頬を膨らましそっぽを向いてしまうが、何かを思いついたようにポン!と手を鳴らす。
「この際だからさ、みんなでお互い直すべきところ教え合わない?そしたらもっと良い噂される班になるかもしれないじゃない!」
「さぁ!二人とも、まず私のことから!」とテンテンは二人の返事を待ったが、リーもネジも黙ったままであった。
「どうしたのよ」
テンテンが不思議そうな顔で再度彼らに問う。
それでも少しの間があり、ようやくネジから口を開いたと思ったら、それはテンテンが想像もしていなかった言葉であった。
「オレはこれといってテンテンに直して欲しいところはないな」
「同じく!ボクもないです。それにネジに直してほしいところもありません!二人とも最高のチームメイトですから!」
ネジはリーの言葉に目を伏せて静かに笑う。それをみたリーがネジの肩をガシッと掴みナイスガイポーズをしてテンテンに笑顔を向けた。
「二人とも……」
テンテンは周りの目を気にしてチームメイトの粗探しをしようとした自分が、急に恥ずかしくなった。
というのも、彼女は常々ガイ班のメンバーのことでため息をついてはいるが、これまでガイ先生も合わせて四人でたくさんの時間を共有し、その中で一緒に成長し、色々な思い出を作ったことは事実だ。噂のことは置いておくと、リーの言った通り、テンテンにとってもガイ班は最高のチームなのだった。
俯いて感情的にふるふると震えるテンテンに優しい声をかけようと、男たちが近づいたときだった。
「ふたりとも、バカー!!」
「テンテン!!」
素直になれないテンテンは演習場をすごい早さで駆け抜けていく。
残されたリーとネジは茫然としていたが、テンテンの気持ちはよくわかっていたので追いかけることはしなかった。
おそらく、テンテンはまたこの場に戻ってくる。そしてリーとネジが彼女を優しく出迎えるだろう。そしてしばらくすれば任務上がりのガイ先生もやって来て、里で噂の熱血ガイ班はこの演習場に集合するだろう。
どんなに変に目立とうと、噂されようと、結局テンテンはこのチームを離れることはない、そして明日以降も四人は共に行動するのだ。
なぜなら、彼らは良き仲間、チームメイトだからである。