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きみはプリンセス@

「綺麗だったわねぇ……」
テンテンはうっとり、顔の前で手を組んで言いました。
そんな彼女にリーとネジは首を傾げました。
リー、ネジ、テンテンはいままさに任務を終えたところで、里へ戻る途中良さそうな茶屋を見つけたので、そこで一息ついているところでした。
今回就いた任務は、とある国の大名の姫君がご結婚されるということでその嫁ぎ先へのお見送りの護衛でした。
三人と歳がさほど変わらないその姫君といったら、今まで出会った女の子の中で誰よりも淑やかでした。また見た目もたいへん美しく、長く伸ばした黒い艶やかな髪を綺麗に結い上げ、華やかな刺繍が施された着物をそれはそれは上手に着こなしていました。その白い肌は真珠のように煌めいて、頬や唇は薔薇色に染まっていました。
三人はそんな美しい姫君をそばに、三日ほど護衛の任務を続けたのでした。中でもテンテンはその姫君に感化されたようで、
「わたしもあんな風に素敵な着物を着て、髪を結って、お化粧をして、忍たちに守られたいなあ」
テンテンは店員がもってきた串団子を誰よりも先に手にとり、頬張りながらそう言いました。言ってることとやってることがかけ離れてるテンテンを見て、ネジは怪訝な顔をしました。
「そうですか?確かにきれいな方でしたが…ぼくは熱く修行に励む忍の方がいいと思いま……」
隣に座るリーが一言。しかしテンテンに睨まれた、すぐ口をつぐみました。
「女の子はみ〜んな、お姫様に憧れるものよ!よく覚えておきなさいよ、二人とも」
「そんなものでしょうか?ネジはどうです?」
「さぁな、俺は男だからわからん」
ネジは眉間にシワを寄せお茶を啜りました。そんなクールなネジですが、ふとテンテンが「わたしなんて…」と独り言を言いながら、これまでの任務中についた傷跡を数えたり、日焼けした自分の頬を人差し指でつついたりしているのを見逃しませんでした。

「えっ、テンテン、そんなこと気にしていたんですか?!」
無事任務を終え、里に戻ったリーとネジ。
彼らは火影の屋敷にあるテラスにいました。
テンテンは任務報告書の提出を終えるとさっさと帰ってしまいました。美しい姫を見た後だから、汚れた自分が恥ずかしいと、まっさきにお風呂に行きたいと言っていました。
「さっき茶屋で休んだ時、ぶつぶつ言っていただろう」
ネジはさきほど見たテンテンの様子をリーに話しましたが、リーは全く気づかなかったようでとても驚いていました。
テンテンの隣に座っていたはずだったよな?とネジは呆れましたが、サクラと修行以外興味のない鈍感な彼のことだから仕方がないとも思いました。
「確かに、テンテンは暗器使いですからね。
多少の生傷はつきものですし、日中外での任務をすれば日焼けもしてしまいますよね。でも、そんなに気にするほどのことでしょうか」
「俺から言わせればそんなこと当然のことだ。忍なんだからな」
二人はそう言って黙り込みました。
あの美しい姫君に感化されてのこと。彼女は忍なんだから、そんなことを気にするくらいならば忍なんて辞めたほうがいいのかもしれません。
それでもリーとネジが何となく思うのは、彼女がいくら忍であろうと、ひとりの女の子であることに違いはないということでした。そう思うと、男臭いガイ班に配属され、文句を言いつつも修行に付き合ってくれているテンテン。たまの休日くらいは女の子らしくしても罰は当たるまい。二人は彼女の悩みを少しでも軽くしてあげたいと思うのでした。
「まぁ、テンテンだって女の子ですからね」
「“女の子はみんなお姫様に憧れる”らしいしな」
でも一体どうしたら?
二人はテラスで、風に吹かれながら考え込みました。そんな時です。
「珍しいな、お二人さん。あんたらもおしゃべりとかするんだな」
リーとネジが振り向くと、そこにはニヤリと笑みを浮かべたシカマルがいました。
奈良シカマル。頭の切れる彼は火影様にも一目置かれる存在。そしてリー、ネジの仲間うちの中ではもっともフェミニストでした。
二人が求めていたのは、まさに彼のような相談相手!
「シカマルくん!!!!ちょうどいいところに!!」
リーはそう叫ぶと、シカマルに掴みかかりました。