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マイホームラブ5

食事が済むと、居間にはイムとバドの二人が残りました。二人は食後のお茶を飲みながら、静かに読書をしています。イムは読書というよりか、例の付箋だらけの秘密の植物図鑑をみているのですが。そんな状況のなか、バドは心でこのように思っていました。

師匠の秘密を探るには、今が絶好のチャンスだな!

バドはイムの空になったグラスに目をつけ、この無言の間を破り、会話を切り出すことにしました。

「ねぇ、グラスが空だよ!ついできましょーか」

イムは「うん」と、本に目をやったまま応えました。
反応の薄いイムに、なんとか会話をさせるべく、バドは食いつきます。

「ずいぶん熱心にその本読んでるけど、それ、なんの本を読んでいるの?」
「え!!!!」

バドのその質問に、イムは大変驚いた様子でした。
イムがあまりに大きい声で返事をするものでしたからバドは持っていたグラスを落としてしまうところでした。

「な、なんで、そんなこと聞きたいの!?コロナになんか言われたの!?」
「コロナぁ?コロナじゃないよ、ししょ、じゃなくて、ただ気になっただけさ。」

バドったら、危うく口がすべりそうになったけれど、なんとか持ちこたえました。イムはバドを疑いの目でじっと睨みつけて、また本を大事そうに胸に抱えて、警戒を続けています。その様子から、読んでいる本に秘密があることは一目瞭然でした。

「ははぁん、師匠、なんか隠してるんだ!」
「か、かくしてなんかないじゃん」
「あーあー、コロナなら何か知って…」
「まって!」

イムは居間から出て行こうとするバドをぐいっと引き止めました。その表情は誰から見ても相当焦っているようにみえたことでしょう。

「言うから、コロナには絶対に言わないで!!」
「う、うん」

イムのすごい形相にバドは素直に頷くしかありませんでしたが、心では「コロナじゃなくて師匠には言ってもいいってことだよな!」と喜んだりしました。
そしてイムはバドをイスに座らせ、自分はその前にしゃがみこみ、用心深く居間をキョロキョロ、窓は開いていない?二階から誰もおりてこないかな?と確認してから、最後にもう一度「いい?絶対に内緒よ!」とバドに念を押しました。

「わかってるよ!」
「あのね、あたし、」
「う、うん」

焦らすイムの態度にバドはドキドキしました。
一体師匠はなにをかくしているんだー!と。

「あたし、コロナに作ってあげる約束をした、大事な香水をこぼしてしまったの」
「!!!」

バドは心臓がとまるかと思いました。
まさか、そんな、コロナの

「香水?!」

だなんて。

「そう。コロナが庭でやっとのことで育てたお花で作る約束をしたのよ。この間ようやくできたのにこぼしてしまったの。ぜんぶ………」

バドは心配していたことより、全然的のはずれたことをいうイムに呆れてものも言えない状態でした。まさか香水のために日夜まるで病気のように引きこもり生活をしていたなんて。
一方イムは、バドのその驚いた姿を、純粋に驚いていると勘違いしていました。そして苦笑いにつつも「驚かせてごめんね」なんて言いながら、バドの小さい頭を撫でました。

「ううん、でもなんだ〜そんなことかよ〜」
「ちょっと、そんなこと?って?どういう意味?」
「な、なんでもないです!ででで、なぜ植物図鑑みているの?花なんて花屋で買えばいいじゃん」
「バカねぇ、売ってないのよ。だって」
「だって?」
「そのお花はめっずらしいお花なのよ!この辺りじゃ売ってないから、コロナがそだてたんじゃない!」

イムはそういうなり、付箋がびっしり付いた植物図鑑のそのお花のページを開き、これでもかというくらいにバドに見せつけました。

「このお花よ、このお花!売ってないでしょう!」

「はは、そ、それは困りましたね………」
「そうよー!すごぉぉぉく困っているの!でもなんとかしようとしているんだから、絶対にコロナに言わないでよね!」
「はぁい」

バドが力なく返事をすると、イムはぷりぷり怒りながら二階に上がっていきました。
それを見届けるとバドは急に疲労を感じて、肩が上がるくらい息を吸い込み、そのまま大きなため息を吐きました。


「と、とりあえず、聞き出したぞ!師匠に報告しなくちゃ」

そういうと、先ほどまで読んでいた自分の本をテーブルから取り、トトの部屋へ向かいます。でも、はっと気づいて再び居間にもどってきました。

「コロナに食後のお茶は自分で片づけるように言われてたんだっけ。あぶないあぶない」


つづく