金平糖

「名前は金平糖みたいだね」

勘右衛門がそんな事を言うもんだから“こんぺいとう”というものが気になった。

“こんぺいとう”ってなんだ?

勘右衛門に聞いたら「今度見せてあげるよ」と言われた。

今度っていつだ?私は今知りたい。

そんな思いに駆られた私はとりあえず図書室に向かった。

図書室に行くと一年は組のきり丸と五年ろ組の不破雷蔵がいた。

「不破くん、“こんぺいとう”というものについて知りたいんだけど…」

「金平糖?この間きり丸から貰った南蛮菓子のことかな?」

どうやら“こんぺいとう”は南蛮菓子らしい。

グローバルな女とでも言いたかったのかな?まぁ悪くはない。

「あぁ、あれっすか?あれはしんべヱから貰ったんすよ」

貿易商のパパさんからの南蛮土産で は組の皆で分けたんです、と続けた。

それを更に各々委員会へ持って行き、分けたようだ。

「きり丸、余りはないのかい?」と不破くんが聞いてくれたが
しんべヱの事だからもう全部食べてしまっているとのことだった。

実物を見れないのは残念だけど、はなから実物にありつけるとは思っていない。

南蛮菓子だと分かっただけでも調べる見当が付いたので私としては充分嬉しい。

南蛮菓子についての書物が置かれているところまで二人に案内されながら
“こんぺいとう”がどのようなお菓子なのか聞いてみた。

「砂糖菓子ですよ、ちっさくて甘いの。」

あんな小さいのに結構な値段だっていうんだからびっくりっすよねーと言いながら
きり丸が手でその小ささを表す。

なにそれ、大豆みたいなサイズ。そんなに小さいの?

勘右衛門は私の事、豆みたいに小さな女だとでも言いたかったのかしら?
失礼しちゃう。

「とても綺麗で色んな色があったな。何色から食べようか悩んじゃって僕は全然食べれなかったよ」

綺麗なお菓子なの?

なに?勘右衛門たら遠回しに「名前、綺麗だよ」って言ってたわけ?

嘘?!キザったらしい!

「あ、名前。あったよ、これこれ。これがその“金平糖”」

不破くんの広げてくれた本には“金平糖”についてイラスト入りで説明されていた。

あいにく墨一色で書かれたそれからは色とりどりの綺麗さはわからなかったが、大体の形は把握できた。

何これ、いっぱい尖ってて可愛くない。

イガグリみたい。

勘右衛門は私が、いがいが尖った性格の悪いやつとでも言いたかったのか?

「ねぇ不破くん、これ綺麗なの?」

そもそも本当にお菓子なのか?

「綺麗だよ。というより愛らしい、かな?小さくて可愛らしいお菓子だったよ」

ね、きり丸。と不破くんが同意を求めるときり丸は頷き、女の子が好きそうだと答えた。

どの辺りが可愛いのだろうかとじっとイラストを見つめていると
不破くんがくすっと笑って言った。

「この絵はわかりにくいかもね。この絵は大きく描いてあるだろ?実際はとっても小さくて可愛らしいお菓子だよ」

そうなのか。そんなに悪いものではないのか。

しかし、勘右衛門は何を思って私みたいだと言ったのだろう。

「あ、名前いたいた!」

名前を呼ばれた方を振り向くと勘右衛門がいた。

尾浜先輩、図書室では静かにしてください。ときり丸に言われている。

「金平糖、見せるって言っただろ?買ってきたんだ」

ほら、といって勘右衛門は手の中の巾着を開いた。

するとそこには星屑のような色とりどりの金平糖があった。

食べてごらんよと促されるままに一粒掴み、口の中に入れてみる。

その形から、触るとごつごつ痛いのかと思ったけどそんなことはなく
口の中で甘く優しい風味が広がった。

「ね、名前みたいでしょ?」と微笑む勘右衛門の方が、なんだか金平糖のようだと思った。

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