Twitterお題02:(3/3)
彼女、苗字名前と出会ってから幾年月が流れた。
あれから俺たちは何度もデートをし、愛を重ねた。
卒業してからも暇があれば会う約束をして愛を深めていった。
「八左ヱ門はこういうの慣れてるんじゃないのか」
卒業してからは皆と会うことも少なくなった。
久しぶりにあった鉢屋はそれでもやっぱり雷蔵の姿のまま言った。
「は?慣れてねぇよ、初めてだよ、初めて!」
八左ヱ門は相変わらずのぼさぼさ頭で
忍者というより忍者が一緒に仕事をする動物のブリーダーのような仕事をしているらしい。
「あ?初めてってことはないだろ、いろいろと立ち会っているんじゃないのか?」
兵助はこういう時も、いやどんな時でも持ってくるものは豆腐なんだよな。
「こういう時はどうすればいいのか…」
雷蔵の悩み癖はそう簡単には治らないみたいだ。
また昔のように悩み込んでしまった。
「皆ごめん、皆が来るまでにはと思ったんだけど…」
「いいさ、むしろ私達の方が悪かったな。こんな時に来てしまって」
ばつが悪そうに鉢屋が言う。
気にしなくていい。そういう仲でもないだろう?
寧ろ手紙を出してすぐに駆けつけてくれたのは嬉しいよ。
「どうなんだ、名前の様子は?」
八左え門が心配して聞いてくれる。
「大丈夫、と信じたい」
視線を皆から名前のいる部屋の方へと移した。
名前は今、別の部屋へと運ばれている。
中からは苦しそうな声が聞こえた。
「苦しそうだな」
兵助がぽつりと言った。
「出来ることなら変わってあげたい」と俺が言うと、ずっと悩んでいた雷蔵が「大丈夫だよ、案ずるより産むが易しって言うし」と励ましてくれた。
俺の不安を感じたからか、悩み過ぎた果てに大雑把が出てきたのかはわからないが、お蔭で少し落ち着けた。
皆がいてくれてよかったなと思った。
皆が自分の事の様に心配してくれるのも嬉しかった。
慣れない状況にみんなそれぞれ緊張を感じている。
と、急に部屋の方から張りつめていた緊張を断ち切るような声が聞こえた。
おぎゃーおぎゃーと泣いている。
すぐさま部屋の方に駆け寄ると、扉が開いた。
「お父さん、元気な女の子ですよ」と助産婦さんに言われて、あぁ俺、お父さんになったんだなぁと思った。
「勘右衛門、男の子じゃなかった…ごめんね」と言う名前に近づいて手を握る。
「何言ってんの、頑張ったね、ありがとう」
言いながら涙が出ていた。
男の子はまた今度頑張ろう、と笑って言うと名前が小さくうんと頷いて
「お父さんも赤ちゃん抱っこしてあげて」と言った。
生まれたばかりの小さな命を抱くと、今にも壊れてしまいそうで少し怖かった。
でもこの子を守っていけるのは俺だけなんだと思った。
この子と名前を守っていかないとと思った。
仕事には危険が付いて回る。
けれど俺はもう死ぬわけにはいかない。
何があっても生き抜いて、この子と名前を守ってみせよう。
『きみがいること=無敵ってこと』
-end-
お題:まあ、一目惚れです/(時間なんて、止まればいいのに)/きみがいること=無敵ってこと
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