ホットミルク
今夜はなんだか眠れなかった。
暗い部屋にコール音が鳴った。
「もしもし名前?まだ起きてたんだ」
勘右衛門からだった。
「用って訳じゃないんだけどさ、なんか眠れなくて」
名前の声が聞きたくなった、と彼は言った。
いつも側にいたからか相手の温もりを感じないのが
不安で寝れなかったのだ。
私は自分がどれだけ弱く、
どれほど彼に依存してしまっているのかと悔しく思ったが、
勘右衛門も同じだったのだ。
それが少し嬉しかった。
勘右衛門の声が温かく私の体に染み込み甘い余韻を耳に残す。
まるでホットミルクみたいだな、
そんな事をぼんやり思って眠りについた。
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