桜餅

困っているお婆さんがいたので助けてあげたら、お礼にと桜餅を貰った。

でも私は桜餅が好きではない。

お礼なんていいです。と断ると、遠慮しないで、と渡された。

あまり無下にも出来ずに貰ってきたが、折角くれたものを食べずに捨てるのは忍びない。

でも私は桜餅が好きではない。

そうして私は先程から食堂で桜餅と睨めっこをしているというわけだ。

ユキちゃん達にあげようかとも考えた。

でも貰った桜餅は一つ。

どのくのたまにあげたらいいものか。

(あの子達、饅頭一つで結構な喧嘩を始めるから…)

そんなことを思っていたら後ろから「あ、桜餅」と言う声が聞こえた。

見ると五年生の忍たまが遅い昼食を終えて出ていくところだった。

「もう桜餅の季節なんだね」とか話ながら出て行った。

(あの人桜餅好きなのかな?)

「桜餅見たらお腹空いてきちゃった」

「お前、今食べたばかりだろ?」

「甘いものは別腹」

追いかけて食堂を出るとそんな会話をしていた。

“甘いものは別腹”なんて、随分と可愛いこと言うんだな。

「あの、これ食べます?」

「え?俺?いいの?」

「はい。街でお婆さんに貰ったんですけど、私桜餅苦手で…捨てるのも勿体ないし、よかったら食べてください」

やった、ラッキー。そう言って私の手から桜餅を取ると、まるっと口に入れて少しもぐもぐとしながら「ありがとう」と言った。

桜がぱぁっと咲いたような笑顔を私に向けて。

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