St.Valentine's day

バレンタインが近づくとちょっとワクワクする。

誰かに渡す予定があるわけでも、ましてや貰う予定などまったくないのだけれど
チョコレートが大好きな私にとって、街がチョコレート一色に染まるこの日はなんだか特別なのだ。

できることならイケメンの男の子に生まれてきたかった。
そうしたらいっぱいチョコレートを貰えただろうに。

そんな事を考えてしまう。

「苗字。苗字は誰かにチョコあげるの?」

教室でポッキーを食べていたら尾浜に声を掛けられた。

「別に。てか私がチョコ欲しい」

尾浜は同じクラスのお菓子友達だ、お菓子友達と私は勝手に思っている。

尾浜はいつも私がお菓子を食べているとひょいと現れてお菓子を少し貰っていく。

それか少し自分の持っているお菓子を分けてくれる。

ただそれだけの友達だ。

「色気がないねぇ、まぁ苗字らしいけど」

そう言いながら今日も私のお菓子を食べていく。

「そう?じゃぁ誰かにあげようかな」

あげる当てはないけれど。

「誰にあげるの?」

「うーん、お父さん?」

「なんだ親父かよ、つまんねぇ」

つまんねぇってなんだよ。つまんねぇって。

「じゃぁ誰にあげたら面白くなるの?」

一瞬間があって尾浜が「俺?」と答えた。
お前、チョコ欲しいだけだろ。

「尾浜はいっぱいもらいそうだなー」

「まぁ自慢じゃないけど結構貰うよ」

「はは、自慢じゃん。それなら別にいらないでしょ」

「そんなことないよ」

やっぱりチョコ欲しいだけじゃん。この食いしん坊万歳が。

「欲張りだね。貰えるなんて羨ましいなー」

私も欲しい、そうぽつりと漏らすと「じゃぁ俺があげようか」と言ってきた。

「…え?!いいの?」

私がお菓子、特にチョコレートを好きなのは尾浜も知っている。

「苗字好きでしょ?」と聞かれて「うん、大好き!」と答えると尾浜は笑った。

「でもその代り苗字も俺に頂戴ね」

交換か、それも悪くない。

「いいよ」と言うと尾浜は「絶対だからな」と言ってポッキーを咥えて教室から出て行った。

尾浜はどんなチョコをくれるのだろうか、私はどんなチョコをあげようか。

なんだかドキドキしてきた。

こんな気持ちも悪くない。

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