肉まん
とても寒い夜だった。
澄んだ空気がくっきりと月を映し出す。
今夜は満月なんだな、そう思っていると少し前を歩く名前が立ち止まった。
まあるい満月をじっと見つめて、何か思いに耽っているようだった。
そんな彼女を見つめていると「月が綺麗ですね」なんて夏目漱石の言葉がふと頭をよぎった。
名前は何を思っているのだろう。
同じ事を思っていたらいいな、なんて考えて一人恥ずかしくなった。
するとふいに「肉まん」と言う名前の声が聞こえた。
「ねぇあの月肉まんみたいじゃない?お腹空いちゃった」
突拍子もない言葉に思わず笑うと、何で笑うの、と不服そうに彼女は言った。
「名前らしいなと思って。肉まん、買いに行こうか。」
そう言うと名前は頷き、また俺の少し前を歩いて行った。
急いで彼女の横に並びさりげなく手を握って
いつか自然と彼女と並んで歩ければなと思った。
「そういえば月が綺麗だね」
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