「……帰りたい…」
放課後見事に補習をくらってしまった私は最後の最後まで教室でプリントと格闘していた。そりゃそうでしょ。補習受けるくらい残念な頭してるんだから。なんて自棄になりながら真面目に問題を解いていく。しかしペンが紙の上を走る速度がどんどん遅くなっていって。そしてまたペンが紙の上を走る速度が上がった頃にはもうプリントの問題は解いておらず落書きを始めていた。
「あれ?」
「!…………東月…くん?」
暫くして私しか居なかった教室に東月くんが現れた。心臓がどくんとはねるのが自分でもわかった。私はプリントに書いてあった落書きを物凄い勢いで消した。
「まだ補習中?」
「…あっ……えと………解らない、問題…があって……」
「じゃあ俺が教えてあげようか?」
「……えっ…?」
東月くんと話していたら顔が熱くなって、心拍数もどんどん急上昇。自分でも東月くんと話していて物凄く動揺し過ぎ、そう思った。それなのに東月くんはそんな私を見て終始笑顔でいるものだからまた私の顔が熱くなって、心臓もどんどん急上昇して。悪循環。もう私はそれで気が気じゃないのに教えてあげようか?なんて言われたらもう何も言えなくなるのは当たり前で。友達とまではいかないもののただのクラスメイトとか顔見知りとかよりは上で。そんな曖昧な関係の私と東月くん。あぁどうしよう。
「………でも…月子ちゃん、が……」
自分で何言ってるんだろう。こんなの自分の首を絞めるだけなのに。でも東月くんの彼女である月子ちゃんよりもしかしたら。そう思う自分がいて。そして気づいたらこんなこと聞いてしまっていた。さっきとは違う胸の鼓動に凄く嫌な感じがした
「あー……そうだった………」
心臓はさっきまで忙しなく動いていたのに今度はぎゅーっと締め付けられた。
「ごめんね、俺月子待たせてたからその、……」
「ううん。気にしないで。それに月子ちゃん悲しませたりしたら私も怒るからね?」
「わかった気を付けるよ。じゃあ補習頑張ってね。さようなら」
さようなら、そう言って手を振った。それをみて手を振り替えしてからはあと私なんか見ずにすたすたと帰っていった。…私はしっかり笑えていただろうか?本当自分の惨めさに泣けてくる。
「…東月くん好き、だよ……ばーか…」
好き、大好き。でも愛は解らない。だって愛は二人の気持ちが重なって初めて分かるものだと、私は思うから。ばーか。この言葉は誰に対してのものなのか。惨めな自分に?彼を取った月子ちゃん?私の気持ちを受け取ってくれない東月くん?解らない。行き場のないこの感情を抱えた今の私にわかることは、只私は自分の気持ちを殺し幸せそうな二人を見ることしか出来ないってこと。それだけ。
叫んだ君の名は、空虚に消えた。
(もう)
(叫んだって)
(今の貴方にはもう)
(届かない)
企画参加→君ニ、願ウ