告白する確率100%


「ブン太先輩。もし願いが叶うとしたら何願います?」

「ケーキ一生毎日食いたい」

「…へぇ」



考えただけで吐きそう。

部活始まる前の部室での話。
なんでこんな質問したかってーと、今日の夜、何とか流星群が見られるって話を聞いて。

俺としては是非、その流れ星サンに願いをかけたいと思ったわけ。
他の人はなんてお願いすんのかなーって。気になったんだ。



「幸村部長は?」

「そうだな。赤也が英語できるようになることかな?」

「い、いいッス!そんなの!」

「フフ、遠慮しないで」



いや、英語はできるようになりたいけど、
幸村部長のことだからオプション付きだ。英語漬けの毎日になるとか、英語しかできないようになるとか。



「ジャッカル先輩は?」

「俺はー、新しいシューズかな。いや、ラケットか。もしくは自転車…」



控えめと見せかけ意外と欲深なんスね。坊主なのに。



「真田副部長は?」

「男子たるもの願いはかけるものではなく、叶えるものだということをお前は…」

「ハイハイ」



真田副部長のジジくせー説教をスルーして、俺はコートに向かう。

外では、柳生先輩と仁王先輩がストレッチしてた。



「願いごとですか?…そうですね。新しい顕微鏡が欲しいです。今のは壊れてしまって比率がうまく…」



俺は理科の時間ですら顕微鏡触りもしねーのに、
プライベートで持ってる人初めて見た。



「仁王先輩は?…一応」

「一応てなんじゃ」

「だって仁王先輩はいつもまともに答えてくんないじゃないっスか」

「何言っとる。願いはいつも胸にあるぜよ」

「なんスか?」

「俺の願いはただ一つ。世界が平和になることじゃ」



あんたみたいな詐欺師がいなくなりゃ多少は平和になるっしょ。



「ほーう。赤也、そーゆうことは思うだけにしとけ」

「…やべ!声に出て…アデデ!」



極上の微笑みでツイストかけられた。
マジいてぇ!



「それより、はよ本命に聞きんしゃい」



爽やかとは掛け離れた爽やかな笑顔で仁王先輩は言い放った。

本命。俺は小走りに、あの人の元へ。



「おーっす!赤也!」



めちゃくちゃ可愛い笑顔で迎えてくれた。
寒さが一気に吹っ飛ぶ。



「うぃっス、名前先輩!寒くない?」

「寒いよー!だからほら、中にセーター!」



名前先輩はジャージの裾を軽く上げ、学校指定のセーターを見せた。



「暖かそうっスね!俺手冷たくて…」



そう言ってさりげなく、いやいや、全力の下心で、俺は先輩のセーターの下に両手を突っ込む。



「へへっ、あったけー!」

「あ!もー、スケベ!」

「名前先輩の腹柔らかいっス!」

「しっつれいね!このバカ也!」

「ははっ!あ、ねぇねぇ名前先輩。名前先輩は願いが叶うとしたら何願う?」



いきなり何よ、みたいな顔されたけど、なんかけっこーマジな顔して考え込んだ。



「一つ願いはあるんだけど…、うーん、やっぱり今は立海が全国優勝することかな」

「さすがマネージャー!」

「でしょでしょ?」

「他の先輩たちに見習わせたいっス。あの人たち自分の欲ばっかで…」

「あははっ。まぁあいつらはしょーがない!…で、赤也は?何願う?」



俺の願いなんて決まってんじゃん。
ああ、鈍いこの人は知らないか。



「好きな人と両想いになりたい」



先輩は一瞬止まったけど、すぐに、赤也らしいねって笑った。

誰なのか、聞かないのかな。
気にならないのかな。
俺なんて眼中にないのかな。



「叶うといいね」



一瞬、きっと流れ星より短い一瞬。
先輩の笑顔が崩れた気がした。

まだ流れ星は流れてないけど、
その一瞬に、
俺はかけてみた。

願いと、運を。



「名前先輩次第なんスけど!その願い叶うの」



言ってて顔が熱くなるのを感じた。
恥ずかしいこと言っちまったーって。

でも、そんなことよか、
俺の見間違いじゃなきゃ、
先輩のが顔赤くて。



「それならとっくに叶ってる!」



ちょっと膨れ気味に叫んだ先輩の言葉が、
俺の聞き間違いじゃなきゃ…、



「名前先輩、今俺のこと好きって言った!?」



多少誇張しちまったけど。

小さく頷く先輩がそれはまた可愛くて。
流れ星に願いをかけるまでもなく、
俺の願いは叶った。



「ところで何で願いごとの話になったの?」

「ああ、今日の夜、流れ星が流れるから願いが叶うぞって、言われたんスよ」

「誰に?」

「柳先輩」

「…怖いね、参謀」

「へ?」

「…いや」



『告白する確率100%』END

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やるねぇ参謀
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