storyteller:Nioh&Bunta

※下ネタというか卑猥な表現があり、プリガムがとても男子中学生です。苦手な方はご注意ください。



「…なぁ」

「ん?」

「そろそろ終わりにしたいんじゃけど」



みんなもう帰ったあとの部室。佐奈が一人、まだ片付けがあるってことで俺も一緒に居残った。
と言っても何かを手伝うわけじゃなく、ただぼーっと入り口付近に突っ立っとる。

佐奈の手伝いに関しては、半端に手を出して適当にやって怒られるっちゅうお約束があり、でも今日はそんな気分じゃなかった。



「終わりにって、これ?まだもうちょっとかかりそうなんだけど…」

「そうじゃない。わかっとるじゃろ?ずっと前から」

「…え」

「俺の気持ち」



今日やった試合の結果をまとめるためか、椅子に座ってガリガリノートに書いていた佐奈は、手を止めて俺を見た。



「いい加減、ケジメつけたいんじゃ。今の俺らの関係に」



ゆっくりと佐奈のもとへ向かう間、何を考えとったんじゃろな。少なくともいつものふざけた俺じゃないってことぐらいはわかっとるはず。



「佐奈、俺のこと好き?」



何も答えない。迫ると答えないのはある程度予想していたが、実際そうされると苛立つもんで、佐奈の腕と腰を持って立ち上がらせた。



「…に、仁王」

「俺の気持ちはずーっと、決まっとるぜよ」

「ちょっと…まっ」

「佐奈とこういうことしたいって」



後頭部に手を回し、逃げられないように力を込めた。油断も隙も見せるわけにはいかん。こいつの答えがどうであろうと、今日の俺の決意は固いつもり。じっと見つめたまま顔を近づけ、あと数センチでキスできる距離になった。

でも、ほんの少しだけ、佐奈が悲しそうな顔だと気づいた。明らかな抵抗はせんくせに、こういう顔だけで訴えるのって卑怯じゃき。



「…嫌なら今すぐ殴りんしゃい」



佐奈の右手首を掴んで俺のほっぺたまで持ってきた。わずかな抵抗だったのか、都合良くも佐奈は拳を握っていたから。

たぶん殴られる。言われる言葉は“なにすんのよ!”か、“近寄んな変態!”か。だがそんなの待つほど俺はお人好しじゃない。無理矢理キスするのも今なら可能。

でも、無理なんじゃ。悲しそうな顔を見ちまうとストップがかかるから。



「仁王…」



呟いた佐奈は、殴ると思っていたその拳を解いて。
俺のほっぺたを優しく撫でて笑った。



「殴るわけないじゃん」

「……」

「いいよ、あたしは。仁王となら……」



か細いその声を最後まで聞き終えてから、俺は今まで大事に守っていたはずの理性の糸を自ら断ち切り、貪るように佐奈の唇に吸いついた。

こんなことは初めてなはず。なのに、舌を入れることを躊躇う余裕はなかった。腰を強く引き寄せながら、擦れ合う唇から漏れるのはくちゅくちゅというやらしい音。情熱的というか官能的というか、とにかく酸欠になりそうなほどキスをした。



「仁王…」

「ん…?」

「ちょっと、あたってる」



少し離れた唇から、これは佐奈なのかと疑うほど卑猥な台詞が出てきた。そして見たこともない妖艶な笑みと、下のその場所へと向けられた目にゾクッとする。余計に熱が集まる。

唇とともに身体も全部、これ以上ないぐらいに密着させとったから、気づかれるのも当然な話。



「そりゃこんなことしとったらこうもなるじゃろ」

「他の子ともこんなことしてるの…?」

「まさか。佐奈だけじゃき」



一瞬だけ垣間見えたような嫉妬に、心が踊った。そしてまたその艶やかな唇を舌でこじ開け、激しく佐奈のものに絡ませる。

でも今度はわりとすぐに離されるように胸を押された。



「ねぇ、触っていい?仁王の…」

「…え?」

「もう限界でしょ?あたしも…」



こんなに色っぽかったか、佐奈は。俺じゃなくてむしろこいつこそ経験多数なんじゃと疑うほど。
そんな妄想に嫉妬しつつ、きっと違うと信じつつ。言われた言葉に喜んだ。



「俺も触りたい。全部」

「ん。優しくしてね」

「もちろんじゃ」



部室だが誰もいない。きっと学校中誰も残ってない。

またくちゅくちゅとやらしいキスをしながら、少しずつお互い服を脱ぎ捨てていった────…。




「…って感じの夢を見たんじゃ。さっきの授業中」



そこまで語ると、目の前のブン太は再び弁当のふりかけご飯を口へと駆け込んだ。そうじゃろ、ブン太にはちょっとばかし刺激的な話(夢かつちょい脚色あり)だったからのう、箸を止めて聞き入っとった。

ちなみに今は昼休み。ブン太と二人で屋上ランチ中。日常のワンシーンだが、ここから見えるこの澄み渡る空はいつもと違い俺にむちゃくちゃ罪悪感を抱かせた。なんちゅう夢を見たんだと。



「なんつーか…」

「はっきり言いんしゃい。そして忌憚ない意見を言って俺を責めてくれ」

「お前重症だな。相当たまってんじゃん」

「いえす」

「あ、だからさっきの授業終わったあとの起立で立たなかったわけな。ヤバかったんだな下」

「まぁ違う意味で勃っとったがな」



ガッハッハと二人でバカみたいに笑った。いや笑いごとじゃなか。隣の席の愛しの佐奈にバレるんじゃないかと、俺は必死だった。起立できなかったせいで、仁王寝惚けてんの?と佐奈に体をさすられたが、無視を決め込んだ。胸も痛かった。

胸が痛いってのは、罪悪感が半端なかったからじゃ。さっきブン太に話したこの夢の詳細が佐奈にバレたら間違いなく嫌われる。普段冗談でセクハラまがいのことは言うしやってもいるが、これはガチでヤバいと思っとる。



「でもよ、わかるぜ」

「は?」

「そういう夢を見ちまう気持ち。なんかさ、あいつって、妙に小悪魔に見えるときがあんだよな。こないだもさ……」



そこからのブン太の話は、もし食堂ならば食いかけの焼肉定食でももう喉を通らないので下げてくださいとおばちゃんに頼むぐらい、衝撃的だった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ブン太ー」

「んー?」

「これさ、棚の上に上げてくんない?」



差し出されたのは段ボール。場所は生徒指導室。今日は教室の大掃除で、いらなくなった教材とかを仕舞って来いって担任に言われたんだ。近くにいた俺と佐奈がな。ついでにこのまま部活に向かうつもりだから、二人とも荷物は持ってきてる。



「よし、……っと」

「大丈夫?持てる?」

「…お、重い」



棚の上に上げるわけで、これからこの重たい段ボールを椅子に乗って担ぎ上げなきゃなんない。背は俺のが高いし一応男子だからな、これは俺の任務でもあるけど……。



「やっぱりいいや、あたしがやる」

「…すまん」

「いいよ。ブン太、力仕事苦手だもんね」



そうなんだよな。運動神経は学年内でもトップクラスではあるんだが、なぜか力は女子並みという、ちょっとコンプレックスでもあった。

逆に佐奈は、女子のわりには力仕事が得意だ。普段からマネージャー業として重たいもん持ってるからかな。

佐奈が椅子に上ったところで、ふと、気づいた。



「じゃ、ブン太下から渡してよ。ちょっとなら大丈夫でしょ?」

「や、待て」

「え?」



指示された段ボールではなく、自分のカバンからジャージを出して渡した。



「なに、ジャージ?」

「履けよ」

「え、なんで」

「…だから、見えそうなんだよ」



普段、真田やヒロシから散々注意を受けてるその短いスカートから、白い太ももはもちろん、パンツも見えそう。



「エッチ」

「お前なぁ、せっかく気づかってやってんだろーが」

「じゃあその目はなによ」



ツッコミを入れられた通り、話してるってのに俺の目はずーっと佐奈のスカートに向かってた。正直、目が離せなかった。



「ブン太って絶対モテないよね」

「いやいや、ちょーモテてんだろい」

「力仕事できないし、スケベだし」

「スケベ!?どこがだよ!」



フンッと鼻息荒く佐奈はジャージを受け取り、椅子の上に立ったままバランスよくそのジャージを履いた。

…だからぁバカかよこいつ、もうすっげー見えてんだよ。しかもなんなんだよ黒ってすげーエロいじゃんか。
でもこれは不可抗力っつーか悪いのは佐奈だからな。悪いけどバッチリ見させてもらったから。



「やっぱりブン太、足長いねー」

「…ん、そうか?」

「まぁあたしよりってことだけど。じゃあその段ボール取って」

「お、おう」



軽くジャージの裾を捲ったときのその体勢、抱きついたらすげーとこに顔が埋まるなと変なこと考えちまった。

だから慌てて段ボールを渡した。離した。



「わっ…ちょっと」



いくら平衡感覚のいい佐奈でも、俺が適当に重たいもん渡したせいでバランスを崩しちまって。
ガターンと、下に落下した。



「大丈夫か!?」

「いてて…」

「ほんと悪い!邪な俺のせいだ!」

「もーちゃんと渡してよ!」



ぶつくさ文句を言いつつ、あっさりと立ち上がった佐奈。別にちょっと痛いだけでたいしたことねーのか?なんて思ったけど。
ほんの少し足を痛そうにした。



「よーし、もっかいチャレンジ!今度はちゃんと渡してね!」

「いいよもう」

「は?」

「俺らには無理ってことで、放置しとこうぜ」



なに言ってんだコイツって目を向けられたけど。でもそれはそうじゃん。
俺はちょっと佐奈より背は高いけど、どっちもどっちだし、なのに俺らに任せる担任が悪い。だいたい学級委員でもなんでもないのに押し付けるなんてパワハラだと。

そう言うと、佐奈もたしかにそうだわ、と一瞬で納得した。いい意味でも悪い意味でも物分かりのいい佐奈とは、普段から阿吽の呼吸で話が進む。



「よし、んじゃさっさと部活向かおうぜ」

「りょーかーい!」



そう言いつつ、佐奈に背を向けてしゃがんだ。



「…なにしてんの?」

「乗れよ。おんぶしてってやる」

「え!?なになにどうしたのブン太!?」

「面倒押し付けたのは担任だけど、お前にケガさせちまったのは俺のせい」



まぁたいしたケガじゃねーかもしれないし、十中八九、大丈夫だよ!って遠慮されるだろうと思った。

だがしかし。



「やったー!なんか足捻ったっぽいんだわ、じゃあ部室までシクヨロー!」



ガバッと遠慮や恥じらいなんて一切なく、佐奈は俺の背中に飛びついた。自分で申し出たくせに予想外で、体が大きく沈む。
でもここですっ転んだらカッコ悪過ぎるし、佐奈にも悪いしで、なんとか踏ん張った。



「重てーよ」

「失礼な!ブン太の力がないだけでしょ!」

「まぁ天才的なブン太様だからな、安全に送ってってやるぜ」



近くにあった二人のカバンも足プルプルいわせながらなんとか掴んで、生徒指導室をあとにした。

正直、足引きずってても普通に歩いたほうが早いぐらいのスピードだけど。



「楽チンだなー、ブンタクシー!ブン太がモテなくてよかったー」

「だから俺はモテるって言ってんだろい」

「モテて彼女できちゃったらこんなことやってもらえないもんね。よかったー」

「なに言ってんだよ。そもそもお前以外にこんな面倒なことやってらんねーから」



素っ気なく吐き捨てたつもりが、けっこうなことを言っちまったと。そう気づいたのは、佐奈の腕が俺の首元に回りチョークスリーパーの如く絞められたからだ。



「ぐっ…なんで絞めんだよ!落とすぞ!」

「カッコつけたこと言うからですぅ。でもまたケガしたらシクヨロね、ブンタクシー」

「はいはい」

「逆にブン太がケガしたらあたしがおんぶするからね」

「できんのかよ?おんぶ」

「むしろブン太のことおんぶできるのはあたしぐらいだよ。ブン太モテないし重いし。だからあたしがするから安心して」

「じゃあ頼んだわ、シクヨロ」



またぎゅううっと首元絞められた。苦しいけど、胸が当たってちょっとラッキーなんて思った。

…ラッキーってだけじゃなくて、なんかちょっと胸がキュンともした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「…ってことがあってさ。なんつーか、無自覚なのかどうかわかんねーけど、けっこうそういうとこあるよな、あいつ」

「え?ちょい待って、それなに夢?夢じゃろ?妄想じゃろ?」

「ちげーよ、事実」

「……」

「こないだあったほんとの話。ちょっと脚色ありだけど」



なんのかの言いつつ佐奈は俺が好きだと本命だと愛されてると思っとったが……。

こんな体が震えるほどの危機感に見舞われるのは青学戦以来じゃき。



「ブン太」

「ん?」

「俺は犯罪者になりたくないぜよ」

「?なに言ってんだよ、犯罪まがいのことばっかやってるくせに」

「つまりな」



立ち上がりブン太の腕も掴んで立ち上がらせた。はずみでブン太の箸が落ちてブーブー文句を言われたが。



「今すぐここから飛び降りんしゃい」

「はぁ!?」

「突き落とすのは性に合わん。だからお前には自殺という道を選ばせちゃる」

「おい、やめろバカ!」



佐奈をおんぶとかうらやましいにもほどがある。それ以上になんじゃ、胸が当たった?パンツも見た?黒?あいついつの間に黒なんてエロい下着買ったんじゃ俺も見たいぜよクソが……。



「あ、よかった二人ともいた!」



ブン太とフェンス際でギャーギャーやっとったら、渦中の人物、佐奈が屋上へとやって来た。俺らを探しとったのか、ほっとしたような笑みを向けられた。一旦、休戦。



「二人で立ち上がってなにやってんの?」

「別に」

「聞いてくれよ佐奈!俺、今仁王に殺さ…」



うるさいブン太の口と鼻を手で塞いだ。このまま酸素不足になっちまえと思う。



「よくわかんないけど、とりあえず柳から伝令ね。今日の部活メニューなんだけど…」



参謀からもらったらしきメモ書きを見ながら、佐奈はマネージャーとしての任務を遂行しようとした。

その瞬間、強い風が吹いて、ふわりと佐奈のスカートが舞い上がった。同時に、油断した俺の手をブン太は払いのけた。

また吹いた強い風に、今度は慌てて佐奈は自分のスカートを押さえつけとったが。



「…見たよね?」

「「見てない」」

「あっそう…。…えーっと、柳の伝令なんだけどね」



端的に話を伝えられ、これからまだ赤也に伝えに行かなきゃと、そそくさと佐奈は屋上を出て行った。



「…ブン太が見たのってあれか?」

「たぶん」

「へー…ほんとに黒じゃな」



ぼーっとする俺の肩をブン太はぽんぽんと叩き、見れてよかったじゃんとサワヤカに笑った。



「よくない。さっさとここから飛び降りんしゃい」

「やめろっての!離せ!」

「佐奈とイチャコラしやがって。俺もいつかおんぶどころかあの夢を正夢にしてやるぜよ。だからお前は邪魔じゃ飛び降りろむっつりスケベ野郎」

「うるせーこのオープンド変態野郎!」



END
この二人や幸村くん、柳はオープンに下ネタを話しそう。まぁ中学生なので苦手なのはいつものあの人だけでしょう

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -