朝、目を覚めると目の前にはテリーの寝顔。あー、そっか。昨日は一緒に寝たんだっけ。せっかくひょうたん島に止まるんだし。個人部屋なんてひょうたん島ぐらいしかないし。あたしが無理やりテリーのベッドに忍びこんだった。テリーにベッド落とされたって、あたしはテリーのベッドに入って結局テリーが諦めたんだった。
「ふふっ」
昨日のやりとりを思い出して自然と笑いがこぼれる。テリーはまだ眠ってるし、あたしも二度寝しようかな、と思ったけどいいこと思いついちゃった。
「わっ!サラサラー」
テリーの銀髪を触ってみるとミレーユと同じくらいサラサラだった。羨ましい。テリーの頭を撫でたりするとテリーは眉間に皺を寄せはじめる。もしかしたら起きちゃうかな。
「…ん…」
(か、かかか可愛い!)
テリーが目を開け、眠たそうに目を擦るその様子が猫みたいですっごく可愛い。
「おはよう、テリー!」
「…あぁ」
テリーは朝に弱いみたいでまだ少し意識がはっきりしてないみたいだったからもう一度頭を撫でてみる。
「…子供扱いするな」
テリーに手を払いのけられてしまった。ちぇっ。完全に眠気が覚めたようでテリーはさっさと寝巻きからいつもの服装に着替え始める。それをジーッと見つめる。テリーったらあたしにそんなに着替えシーンみせたいのかな。
「………あんまり、見るな」
耳をほんのり赤くしてテリーはそう言った。あー、もう可愛いな!緩みきった頬をテリーの細い指によって引っ張られる。
「んー、いひゃいー!」
テリーがぷっ、と年相応に笑う顔を見て今日一日幸せな気分になる。でもさ、痛さで涙出そうなんだけど。なのに、テリーは指を離してくれない。なにこれ、なんかの罰ゲームなの。
「よし、許してやる」
テリーがあたしの頬から指をようやく離してくれた。若干上から目線なのはムカつくけどいいや。痛みでヒリヒリしてる頬を擦ってるとテリーは次はあたしの頬を突っついてくる。なんなのこのいたずらっ子は。可愛いけど、可愛いけどさ。
「ねー、早く着替えたら?」
着替えするように促すがテリーは無視してひたすらあたしの頬を突っつく。いてぇよ。
「……………」
テリーがジーッとあたしの顔を見つめる。あたしもテリーから目を逸らすことが出来なくてあたしとテリーは見つめあう。テリーの手があたしの頬を触る。そしてテリーがゆっくり目を閉じて顔を近付けてくる。もしかして、もしかしてだけどこの流れはキ…。
「おっはようございまーす!」
どかん、と派手な音を立てていきなり部屋に入ってきたのは仲間の中で最年長だけど最年長らしくないアモスだった。
「……………………」
「……………………」
テリーがゆっくりと離れてアモスをきっ、と睨み付けるがアモスは他人の悪意には鈍感なのかわからないけど気にした様子なくべらべらと話し出す。
「ミレーユさんからテリーさんを起こしてきてほしいって言われたんですよー。いやー、あういう美人な女性に頼まれてしまうと断れないですよねー」
時計を見れば確かに短い針は8を指している。テリーとじゃれてたからなぁ。
「そういえば何でテリーさんの部屋にバーバラさんがいるんです?」
アモスが首を傾げてそんなことを聞いてくるから何とか話題を逸らすとアモスは忘れてくれた。扱いやすい馬鹿でよかった。テリーが嫌がるからテリーとあたしが恋仲だということは誰も知らない…はず。ミレーユは気付いていそうだし、レックも薄々気付いてるかもしれない。ハッサンとチャモロはそういうことに疎いから知らないはず。アモスは…よく分からない。ドランゴは確実に気付いている。たまに殺気を感じるぐらいだし。あたしは別に皆に言ってもいいって思ってるんだけどなぁ。
「早くしないとレックとハッサンに朝ごはん食べられちゃいますよ」
アモスが部屋に去っていくとはあ、と溜め息が重なる。テリーも疲れてるみたい。
「…続きはまたあとで、な」
「う、うん」
テリーが着替え始め、あたしもテリーの部屋から出て自分の部屋に戻ってその場にしゃがみこむ。続きって、たぶんキスの続きだよね。頬が熱い。きっと今、鏡を見たらあたし顔が真っ赤だ。まるで恋する乙女のよう…いや、その通りなんだけど。
「〜っ!」
テリーと唇が触れそうになった場面がフラッシュバックする。テリーとキスをしてしまったらきっとあたしは心臓が爆発しちゃうんだろうな、なんて馬鹿なことを考えていた。
あとがき
まだキスもしていないテリーとバーバラの話。
この話のバーバラは何故かテリー大好きっ子です。
書いてて楽しかったー。
個人的にアモスは空気読まないイメージ。そろそろテリバと主ミレを絡ませたい。
title*
Poison×Apple(20140528)
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