*現パロで大学生&恋人設定。
大学の帰り道に突然の土砂降りに襲われた。あたしの家より比較的にキャンパスから近い距離にある恋人のテリーの家に駆け込むとすぐにお風呂に入らされ、湯船の中であたしはずっと心臓バクバクだった。だって、恋人の家のお風呂に入っちゃってるんだもん。雨は明日の朝方まで続くみたいだし、もしかしたら、お泊まりっていう流れになってそのまま雰囲気に流されて…っていうこともあるかもしれないわけだし…。
下着は幸い無事だけど、もっと可愛いのを身に付けてくるんだった。お風呂から出て、下着を身に付けて、テリーが置いといてくれたパーカーと短パンを身に付ける。鏡を見るとやっぱり男物は女のあたしには大きすぎるようでパーカーの裾のせいで短パンを穿いてないように見える。もはや、ワンピース状態だ、これ。なんかパーカーからいい匂いするし、きっとこれテリーの匂いだよね。テリーの匂いと認識すると途端に暴れだす心臓を服の上から押さえつける。静まれ、あたしの心臓…!
「ふうー、いいお湯でした!」
リビングへ行くと上半身裸のテリーがいて心臓が跳ねた。ドキドキしている自分を隠すようににっこりと笑う。
「…はいてるよな」
「パーカーがでかいからねー。なに、ドキッとした?ムラッとした?」
「そんなわけないだろ。髪乾かしてやるよ」
耳を真っ赤にして否定されても説得ないよ、テリー君。
「いいよ。自分で乾かす。ほらほら、テリーも風呂に入った入った!」
テリーの背中を押して、テリーが浴室へ入ったのを音で確認するとあたしはその場にへなへなと座りこんだ。テリーの生肌触っちゃった。しっとりしてて、綺麗だったなぁ。でも意外と固くて…って!やめやめ!
髪はいつも自然乾燥で乾かしているあたしは適当にそこら辺を見回して、目についたテレビのリモコンを手に取ってソファーに座りながらボーッとテレビの液晶画面を眺める。
早くテリー風呂からあがってこないかなー。
「…ひまー。そうだ!テリーの部屋に行ってエロ本発掘しよ!」
「おい」
「あ、テリー、早かったね」
男の風呂ってやっぱ早いんだー。
「ねえねえ。このパーカー、テリーの匂いがする。」
「洗剤の匂いだろ」
「あたしの全身もテリーの匂いだよ。テリー色に染まってる、うふふ」
「気色悪い顔すんな」
テリーに額をペシッと叩かれて頬を膨らませるとテリーがフッと顔を緩めてソファーに座っているあたしに体を近づけてきた。
「………本当だ。オレの家の匂いがする」
「そ、そりゃあ…テリーと同じシャンプーとか使ってるわけだし?」
耳元で話されるとなんだか落ち着かない。
「なんかいいな、こういうの」
「そ、そう…なんだ…」
こういう甘い雰囲気は未だに慣れなくて上手くテリーの顔が見れない。きっと顔を上げたらテリーの顔がすぐ近くにあって、目があったらキスする流れになるんだろうけどただでさえ心臓がバックバックなのにキスなんてしたら心臓がもちそうにない。
「今日どうすんだよ」
甘い雰囲気を終わらせるように首にかけてあるタオルでごしごしと髪を拭きながらテリーが聞いてきた。普段なら拗ねてたところだけど今回は助かった。
今日どうするか、か…。
きっとテリーからしたら早く帰ってほしいんだろうなぁ。どうしよ。
「髪乾いて雨脚が弱くなってきたら帰ろうかな。」
「明日の朝までこの調子らしいぜ」
「え!?」
窓の外を見ると相変わらずバケツをひっくり返したような土砂降りで傘があったとしてもずぶ濡れになりそうだ。そもそも風が強いから傘本来の機能を果たせそうにない。
「泊まれば」
「はい?」
「泊まればいいだろ」
「いいの?」
「こんな状態で彼女を帰らせるほどオレは鬼じゃない。」
「テリー大好き!愛してるぅ!」
嬉しさが込み上げてきて衝動的にテリーの首に抱きつく。ぐふ、って声がしたけどきっと気のせい。力を緩めるとテリーの腕があたしの腰に回る。
「本当に細いな。ちゃんと食ってるのかよ?」
「ちゃんと食べてますー!あたしの大食いっぷりを舐めないでよね!」
ギュルルと狙ったかのようにあたしのお腹から空腹を知らせる音が鳴る。
これは恥ずかしすぎる…!
テリーなんていつものポーカーフェイスからは考えられないぐらいに笑ってるし。
「うー!お・な・かすいたー!テリー、なんか作ってよー!」
「仕方ないな。寒いから鍋にするか?」
「賛成ー!その間、あたしはホットコーヒー飲んでていい?」
「勝手にしろ。場所は変わってないから」
「はいはーい」
キッチンからコーヒー豆を取り出し、水の入ったやかんに火をかける。
「これで炬燵があったらなー」
「まだ秋だろ」
「今日は特別寒いじゃん」
「確かにそうだな。食い終わって歯磨きとか済ませたらベッドに入るか」
「テリーのベッドに一緒に入っていい?」
「やだ。お前、寝相悪いし」
あたしの家で一緒に昼寝した時のことをまだ根に持っているのか、テリーは。
沸騰した合図を鳴らしているやかんの火を止める。
「ねーねー、ダメー?」
こうなったら女の子の武器。
上目遣い…!
「はあ…」
テリーに溜め息つかれた…。
あたしには女の魅力がないようだ。そりゃあミレーユさんという綺麗すぎる姉がいるんだからテリーはあたしに対して女としての魅力がイマイチ感じられないのは認める。
こりゃ、無理かな。
「仕方ないな」
「え、いいの!?」
信じられなくてつい聞き返すとこくりと小さく頷いたテリーの顔は普段の彼から想像出来ないぐらいに赤くなっていた。
「えへへ、今日の夜が楽しみだね」
「っ!」
凄い勢いで顔を背けたテリーの顔を覗きこもうとしたけど逃げられてしまった。あたし、何か変なこと言ってないよね。テリーに出来上がったコーヒーを渡す。
「ほんと、反則だろ…」
出来上がったホットコーヒーを飲むことに夢中になっているとテリーが小さく何か呟いた気がしたけれど唇を唇で塞がれちゃって何と言ったのか聞くことも出来なかった。本当にずるいんだから。
もう一度コーヒーを飲むとびっくりするぐらいに甘かった。
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10mm(20140930)
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