ずるいから好きです 


「どうやったらミレーユの恋愛対象外から脱出することが出来るかな。それとなくアピールしても鈍感で天然なミレーユは全く気づいてくれないし、やたらと弟扱いしてくるし、正直もう玉砕覚悟で告白した方がいいかな?ミレーユは…」


「長い。一言で纏めて」


宿屋に泊まるとレックがこうやってあたしに相談することは少なくないけど今回は随分と切羽詰まっているようだ。今にも泣き出しそうな顔であたしを見つめてくる。無性に抱き締めたくなるのはコイツが母性本能をくすぐってくるからだろう。戦闘ではあんなに頼りがいがあるというのに恋愛面ではどうしてこう不器用というか奥手なんだか。ミレーユにも同じことが言える。要するにこの二人は端から見たら両思いだ。当事者の二人以外は全員知っている事実でもある。もう焦れったいったらありゃしない。とっとと告白してくっついちまえ!と思うのだがちょっとぐらいあたしのお遊びに利用しちゃってもいいよね。だってレックとミレーユったら揃ってあたしに相談してくるもんだから、どれだけあたしが心の中でリア充め…と思ったことか!


「ミレーユにさ、プレゼントあげればいいじゃん!」


「プレゼント?」


脈略のないあたしの言葉にレックが目を丸くしながらいきなり椅子から立ち上がったあたしを見上げている。


「女の子はサプライズに弱いんだから!」


「サプライズ…」


「ほら一緒に買いに行ってあげるから!ね?」


あたしのベッドに勝手に座っていたレックの腕を引っ張って外へと駆け出す。宿屋から出ようとするとき、ミレーユと話していたテリーが不機嫌そうにあたしとレックを睨んでくるからあたしはにっこり笑ってやった。よし、作戦成功。


***


いかにも女の子が好みそうな雑貨店を回る。うーん、やっぱ荷物持ちがいると快適。


「おーい!バーバラ、これ全部お前のじゃないか…!」


「だって可愛かったんだもん♪」


一目惚れしちゃったらその場で買わなきゃ!一つの場所に留まることなんてあり得ないんだから。


「ミレーユへのプレゼントは!?」


「分かってるってば!ちゃんとアドバイスしてあげるから!」


ちょっとぐらいあたしの買い物に付き合ってくれたっていいじゃない。レックったらいつもいつもミレーユのことばっかなんだから。


「よし!この店でミレーユへのプレゼント買お!」


「アクセサリーがじゃらじゃら…って、あ、アクセサリーは難易度が高すぎるって!」


「アクセサリー以外にもリボンとか髪飾りがあるじゃない!」


「良かった…」


全く早とちりなんだから。
ここの店は結構若い女の子がいてレックは少し居心地が悪そうだったけどそれを見るのもなかなか面白い。


「それじゃ、あたしはアクセサリー見てるからレックはミレーユへのプレゼントを選んできなよ」


「一緒に選んでくれないんだ…」


「ちっちっち。レックが選ぶことに意味があるんだからね?それにあたしは一緒に買いに行ってあげると言っただけで選ぶとは言ってませーん!」


店は選んであげたんだし、これ以上はサービス出来ない。あたしはつい口を挟みたくなっちゃうからなぁ。レックと一緒に選ぶってなったら最終的にあたしが選んだものをレックがミレーユに渡すことになっちゃうかもしれない。それじゃあ意味がない。レックがミレーユのために選ぶことに意味があるのだから。


「…うー、分かったよ」


「ん、じゃ頑張ってね〜」


手をひらひらと振って、さっきから気になっていたアクセサリーの値段を確かめに行く。
ここの店、可愛いんだけどちょっとお値段が高めだ。まぁ、安いやつに比べて丈夫そうだからいいけど。
レックは髪飾りやリボンを見てるらしい。離れてても分かるぐらいに耳が赤い。でもいいなぁ、そういうの。アイツはこういう奴じゃないからレックに愛されてるミレーユが羨ましいや。


「うわっ、高っ!?」


目の前に可愛い指輪があったから値札を見たけどあまりに高すぎた。これ0が2つ多くない?


「バーバラ、決めたよ」


「お、決めた?どれどれ〜」


レックの手元を覗きこむと可愛らしい赤色のリボンがあった。ミレーユに似合いそうな落ち着いた色合いでこれは絶対にミレーユも気に入るだろう。レックって意外とセンスがあるんだなぁ。いつもはデリカシーがないと思ってたけどちょっと見直した。


「いいじゃん。絶対にミレーユは気に入るよ!」


「そ、そうかな…じゃあ買ってくる!」


会計へ走るレックの後ろ姿を眺めながら若いっていいなぁとか考えたり…あたしも同い年だけど、やっぱレックやミレーユを見てるとなんか微笑ましいなぁって思う。


「お待たせ」


「よし、次の店行こー!」


「え、もう帰らないの?」


「あたしはまだまだ満足してないんだから行くに決まってるでしょ!」


渋るレックの腕を引っ張って目についた店を入ったりしているとあっという間に夜になっていた。
宿屋に帰ると宿屋のロビーには何故かアイツがいた。


「ただいま」


レックがテリーにそう言ったけどテリーは何も言わず、一瞥しただけだった。感じ悪っ。テリーったらあたしがレックとデートしてきたから不機嫌なんだ、きっと。そう考えたらニヤニヤが止まらない。あたしの作戦も成功。


「レック、悪いけどコイツ借りるな」


「え、あ、うん…」


「へ?」


気づいた時にはテリーに強く腕を掴まれてそのままテリーの部屋に連れていかれた。さすがのバーバラちゃんでもこれは予想外。ちょっとヤキモチさせたかっただけなんだけどなぁ。
テリーの部屋のベッドに座るとテリーがまた不機嫌になった。

「…何よ」


「…………」


「話すことないならあたし帰るけど」


「チッ…れ、レックと…何してたんだよ」


テリーはプライド高いから何でこんな女が好きなんだって苛ついてんだろうな。いい加減、認めちゃえばいいのに。あたしってそんなに女としての魅力がないわけ?そんなにあたしはテリーとは釣り合わないの?


「別にテリーには関係ないでしょ」


「…そうだな」


なんでそうやって諦めちゃうの。テリーはあたしのことが好きなのにどうして好きであることを止めようとするの?あたしをこんな気持ちにさせといてずるいよ。


「テリーのバカっ!」


あたしばっかり大好き。





title*確かに恋だった
(20140828)

   end 
bkm

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