*七夕ネタ
現パロ
(転生パロも少しだけ)
「よくもまぁ…あんなに食べられるわよね」
不思議そうに呟いたミレーユに同意するようにテリーが溜め息をついた。姉弟の視線の先には浴衣姿の二人の男女がいた。
左手にかき氷、右手にからあげを持っている男はミレーユの彼氏であり、左手にタピオカジュース、右手にたこ焼きを持っている女はテリーの彼女だ。
所謂ダブルデートというものをしていた。
「ねぇ、テリーってばぁ!」
「なんだよ」
「タピオカ飲む?」
バーバラは左手に持っていたタピオカをテリーに差し出す。そんなバーバラにテリーは少しだけ頬を染める。恋人という関係になってから一年以上も経つというのに間接キスというものに緊張してしまうのはテリーだけらしい。
「いらないの?」
首をこてん、と傾げるバーバラにまたテリーは顔が熱くなるのを感じながら体を少ししゃがませてバーバラが持っているタピオカのストローに口を付ける。
「ちゃんと自分で持ってってば!」
バーバラがぷりぷり怒るがテリーは気にしていない。そんな二人の様子を微笑ましそうにレックとミレーユが見つめている。
「ミレーユはなにか買わないの?」
「暑くてあまり食欲が出ないのよ。あなたたちが羨ましいわ」
七夕祭りには毎年大勢の人が来る。人が密集していると当然暑い。屋台にもたくさん人が並んでいて食べたくても自然に食欲が失せるわけだ。
「ほら、じゃあかき氷」
「いいの…?」
「さすがに熱中症になるから、食べろって」
レックが無理やりかき氷をミレーユに持たせるとミレーユは嬉しそうにかき氷の小さなスプーンでぱくぱく、と食べ始める。
小動物みたいな仕草にレックは頬がだらしなく緩む。そんなレックにテリーとバーバラは若干引きつつ、屋台を見ながら歩き回ることにした。
「あ!お化け屋敷じゃん!」
レックがお化け屋敷に指差すと面白いおもちゃを見つけた子供みたいに目を輝かせて一目散に走る。
「あいつ…子供かよ…」
テリーが呆れたようにげんなりする。
「あれってお化け屋敷入るって言い出すつもりじゃないわよね…?」
「え、ミレーユってお化け屋敷苦手なの?」
バーバラが不思議そうにミレーユを見つめるとミレーユは照れくさそうに笑う。
「よし、二人組でお化け屋敷に入るぞー!」
「「え」」
「ふぅん。面白そうだな…乗った」
ミレーユとバーバラが想像した通り、レックはお化け屋敷に入ることを提案した。その提案にテリーは珍しく乗った。
「なんだお前こういうの苦手なのか?」
「ま、前にも言ったじゃん!に、苦手じゃないってば!あ、あたしに怖いものなんてないんだからね!」
「いや、聞いたことはなかったが…そうか苦手なのか」
「あたしの話を聞けーっ!」
「よし、じゃあテリーとバーバラ行ってこい!」
レックがにやりと笑ってテリーとバーバラの背中を押す。
「ギャアァァァァ!!マジで無理だってばぁぁぁぁ!!マジでちびるぅぅぅぅ!!呪われるぅぅぅ!!」
「はいはい。」
先ほどまで大丈夫と言っていたバーバラがぎゃあぎゃあと泣きわめくがテリーがバーバラの肩を抱いて楽しそうに笑いながら連れていく。
「なんか楽しそうね、あの子」
「テリーってバーバラに対してドSだよなぁ…。あれはベッドの上でも…ぐふっ」
下ネタに走ったレックに遠慮なく鳩尾に殴る。それも笑顔で。
「だんだん、ミレーユのオレの扱いが悪くなってる気がする…」
「そう?じゃあ、もしかしたらもっと悪くなるかもね」
ミレーユの笑みにレックはブルッ、と体を震わせて絶対にこの姉弟はドSだと思った。
そんなやりとりを数分しているとテリーとバーバラが帰ってきた。バーバラは泣いているがテリーはいつも通りの表情だ。いつもと違うとしたら表情が楽しげというところだろう。
「そんなに怖かったのかよ?」
「いや、コイツが極端にビビりなだけだ。」
「うぅ…ビビりじゃ、ないもん。っく、こ、怖く…怖く、なかった、もん!」
「ほら、泣くなって」
テリーがバーバラの体を抱き寄せて赤ん坊をあやすように背中を一定のリズムでポンポンと優しく撫でるとバーバラも少し落ち着いたようだ。
「じゃあ、次はオレたちの番だね!」
レックが出発ー!と言ってミレーユがひきつった顔をしていることも知らずに手を引いていく。
バーバラがすっかり元気になった頃にレックとミレーユが出てきた。ミレーユはバーバラのように泣いてはいないが顔面蒼白だ。
「えっと…ミレーユ、大丈夫?」
「え、えぇ。だ、だだだ大丈夫よ」
「姉さんはまだ苦手を克服出来てないんだな」
テリーの言葉にミレーユは目をキッと睨みつけるとテリーはうっ、と声を漏らしてバーバラの背中に隠れる。
「いやぁ…ミレーユの叫び声可愛かったなぁ。キャッとか言ってさ、オレの腕に抱きついてきたし」
レックがデレデレしながらミレーユの可愛さを語っている。
それを聞き流しながらまた歩き回る。レックののろけ話はとにかく長いのだ。
いいタイミングで短冊を見つけた一行は短冊を買うとそれぞれのお願いを書き始めるとレックものろけるのを止めて短冊に何を書くか考え始めた。
「七夕って彦星と織姫が一年に一回一緒にいられる日なんだよね。なーんかロマンチック!」
「じゃあ、オレはミレーユとのことをお願いしようかなぁ」
「じゃあ私は違うお願いにするわね」
「ミレーユさん、マジ酷い」
レックとミレーユのやりとりにバーバラは笑う。
「テリー、あんたはどうするの?」
「特に書くことなんてないが…、仕方ないからお前との事を書いてやるよ」
「ほんっと!素直じゃないわね、テリーったら」
バーバラは嬉しそうに笑いながらそう言った。
レックとミレーユはもう書き終わったようで短冊をくくりつけている。その二人の後ろ姿は幸せそうだ。
「ずっと一緒にいられるなんてあたしたち本当に幸せだね」
「当たり前だ。オレはお前から離れるつもりなんて微塵もないからな」
いつかの世界で一緒にいられなかったときのことを断片的に思い出してバーバラは涙腺が緩みそうになってテリーに抱きついた。
そんな恋人達を祝福するように彦星と織姫が夜空で輝いた。
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確かに恋だった(20140707)
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