*テリバで教師と生徒パロ
途中で力尽きたもの。
少女マンガとかでよく語られる恋とは無縁なものだとあたしは思っていた。男友達はいっぱいいるけど恋愛対象じゃない。馬鹿みたいにはしゃいで笑っていてそんな関係。そりゃあ確かに恋とか憧れるけどまだあたしには早いかなぁなんて思ったりもする。そんなあたしが恋してしまったのは叶うはずのない相手でした。
***
「今日新しい先生が来るらしいぞ」
いつものように男友達であるハッサンが思い出したように言ったその言葉にもう一人の友達であるレックがマジ!?と反応した。
「理科の先生だってよ」
「3年になったからやっぱ担当の教師変わっちゃったかー。ミレーユが良かったなぁ」
というレックの言葉に激しくハッサンが同意する。
「ハッサンって本当にミレーユのこと好きだよねー!コクっちゃえばいいのにっ!」
おりゃおりゃ、とハッサンの腕を突っつけばハッサンは照れたようにやめろって、と笑う。ミレーユは温和で綺麗で美人で教え方が上手い理科の先生で生徒からもよく好かれてる先生だ。この高校の男子5割が彼女に恋してると言っても過言ではない。あたしが男だったら絶対に惚れていた。
「お!時間だな。」
レックにほら、席に座った座ったー!と背中を押されて席に座る。新しい先生はミレーユと同じくらいに優しくて分かりやすい人がいいな。そういえば女の先生なんだろうか、それとも男の先生かな、なんて考えてると理科の先生が教室に入ってきた。その瞬間に沸き上がる女子の声。
「………………」
理科の先生は女子が騒ぐのも仕方がないぐらいにかっこいい若い男性だった。思わず見惚れそうになるぐらいに綺麗な銀髪。整った顔立ちと切れ長でアメジストの瞳。簡単に言えば端整な容姿だった。
「………」
あ、不機嫌そう。なんか怖い感じ。先生ははあ、と溜め息をついて自己紹介をした。名前はテリーというらしい。隣の席のレックとハッサンはこういう奴はきっと教えかたが下手だの、なんだのと言っているがテリー先生の教えかたはすごく上手かった。黒板の字は綺麗だし、配られた授業プリントは分かりやすい。そして声も綺麗だから全然眠くならない(ここ大事!)。
「…今日はここまでだな。次回から本格的に授業を始めるから忘れ物するなよ」
50分なんてあっという間なものだって初めて知った。キャーキャー、と叫んでいる女子に面白くない男子たちは顔をしかめている。
「なんで女って顔ばっかりなんだよ」
「あんたがそれ言える〜?可愛い女の子を見るたびに鼻の下を伸ばすくせに!」
「べ、別に鼻の下を伸ばしてねーよ」
この前、ハッサンとレックと三人でゲーセンに行った時に可愛い女の子を見かけるたびに鼻の下を伸ばすレックの顔は正直気持ち悪かった。黙っていればレックもかっこいいのに。
***
なんであたしが今日、日直なんだろう。日直は簡単に言えば雑用係みたいなものだ。授業が始まるときと終わるときには号令をかけ、問題を当てられて、日誌は書かなきゃいけないし、教科の先生のお手伝いなどもやらされるような地味に面倒くさい。今日じゃなかったら別に良かったのに。こんなことを言っているのには訳がある。今日は理科で実験をするらしく私はテリー先生によってコキ使われている。せっかくの昼休みがパーになってしまったし、なんて言ったって女子の方々の視線が恐ろしかった。そんなに睨むなら手伝ってよ〜、とあたしがそう言えば女子の方々は焦ったようにそうじゃないし、あんたが行けば!?と役の押し付けあいになってしまった。女子って面倒くさいな。あたしは男子といて馬鹿騒ぎをしてる方が何倍も楽しい。
「おい、手…止まってるぞ」
テリー先生に思いっきり頭を叩かれる。あまりの痛さに一瞬天国にいきかけた。テリー先生ってハッサンとかレックより何倍も華奢そうなのに意外と力があるんだなー、なんて考えてるとまた更に叩かれた。
「痛いってば!」
「お前が働かないからだろう。口ばっかりじゃなくて手も動かせ。たまねぎ頭女」
「なななななんですって!!レディに向かってその口の聞き方!」
「…フ」
うわー!むかつく!これが本性か!騙されるところだった。危ない、危ない。でも第一印象よりは好感は持てた気がした。
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