I've never felt like this before.
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「…バーバラ」
隣ですやすやと馬鹿そうな面で気持ち良さそうに眠っているバーバラの名を小さく呟く。起きる気配はない。その事に小さくホッとする。普段は名前など呼ばないから変に緊張する。自分らしくないと思う。こうやって自分が変わったのはきっとバーバラのおかげなんだろう。今日はオレにとっては別に珍しくもない野宿だった。しかし、コイツらは町で宿をとるのがほとんどのことでこうやって野宿するのは珍しいことらしい。満足に湯を浴びれないことが女性陣がとても嫌がるかららしい。そして、隣で眠っているバーバラも先ほどまでそれについて散々文句を言っていた。こっちは全然喋ってもいないのによくこんなに話していられるなと素直に感心した。まぁ、考えてみれば見張りの交代時間までの暇潰しなのだろう。
「…ん…てりー…うふふふ」
「……なんだ……寝言、か」
紛らわしい寝言だ。コイツに寝言で名前を呼ばれたくらいで取り乱してるなんて今日のオレはどうかしてる。もやもやとした気持ちを紛らわすように前髪を掻き上げる。しばらくそんな時間が続くとバーバラがこてん、とオレの左肩に倒れてきてそのままズルッ、と膝の上を占領し始めた。遠慮がなく、人の触れてほしくないところにズカズカ入ってくるだけあって寝相まで遠慮がないな。しばらく悩んだ後、バーバラの頭を自分の左肩に乗るように固定する。
「……すぅすぅ…」
「……………」
考えてみればコイツがこんなに静かなのはこれが初めてかもしれない。寝てるときまでうるさかったらもう救いようがないが、ハッサンはイビキもうるさかったな。きっとコイツが男だったらハッサンみたいにうるさいイビキをかいてるに違いない。
「………………」
なんとなく空を見上げる。夜空は星が満点で綺麗だった。以前の自分ならこんなこと絶対に思わなかっただろう。きっと隣で眠っているコイツのおかげなんだろうな、と思った。
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HENCE(20140604)
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