「たましいだけであろうがなかろうが関係ない話だな。りっぱに存在してるじゃないか。」
あなたにそう言われてあたしがどれだけ救われた気分になったかきっとあなたは知らない。あなたが思っている以上にあたしはあなたの言葉に救われてる。
***
魔王デスタムーアを倒し、平和が訪れた。レイドックではその平和を記念して大きなパーティーを開いた。ご馳走やダンス。いつものあたしならすぐにご馳走にありついて、素敵な男の人とダンスをするだろうけど、さすがに今日はそんな気分にはなれない。この世界から見えなくなる時間が刻一刻と迫っていることは自分が一番よくわかっていたから。誰にも見られないところでひっそりと消えたい。玉座の間なら誰もいないだろうし、静かかな。玉座の間に行こうとする途中にテリーを見つけ、話しかける。
「テリー、いつもありがとね」
「なんだいきなり。お前らしくない。」
テリーが訝しげにあたしの顔を見る。いきなりこんなこと言ったら怪しまれるなんて分かってた。それでも最後にちゃんとお礼を言いたかった。
「ううん、ずっと言いたかったことだから。あと…」
大好きだよ、と続くはずだった言葉は喉に引っかかって口に出せなかった。
「…ん?」
「う、ううん。何でもないっ!」
顔を大きく横に振って、その場から逃げようと勢いよく立ち上がろうとすると不意にテリーに腕を掴まれた。
「きゃっ」
バランスを崩したあたしはテリーに抱きしめられた。一瞬だけギュッと強く抱き締められて、どうしようもなく泣きたくなった。
「わ、悪い…」
テリーがパッと腕を離し、あたしも体勢を整える。
「ううん、大丈夫」
ああ、どうしよう。消えたくないよ。テリーとずっと一緒にいたいよ。テリーに抱き締められたときにあたしテリーとの未来を想像してしまった。叶うことのない想いだけが募っていって辛い。あたしは確かに存在している。この世界じゃなくて夢の世界で。たましいだけでもちゃんと存在しているのにこの世界にはいられない。この世界との接点がだんだん切り離されていく感覚と自分の手が薄くなっている。早く逃げなきゃ。テリーに見られちゃう前に。早く。
「待てって」
テリーがあたしの手首を掴もうとするがそれは出来ず、空気を掴むだけだった。
「……あ……」
「…なんだよ…これ…」
「………最初からこうなることは分かってたから。だから、そんな顔しないでよテリー」
テリーは悔しそうに唇を噛み締めている。
「…最後は、笑顔でお別れ…しよ?」
自分で言っときながら目からは絶え間なく涙が流れる。泣き顔でお別れなんて嫌だから無理やり笑って見せるとテリーも優しく笑った。
「ブサイクな顔だな」
「うっさいわねー」
いつものやりとりをする。そんな何気ないことももう出来なくなっちゃうんだなぁ、なんて考えたらまた悲しくなっちゃうからもう止める。
「じゃあね」
「ああ、またな」
ほら、またあなたのそういう言葉であたしは救われる。またな、なんてもう会えないのにテリーが当たり前のようにそう言うと本当にまた会える気がした。
「……好きだったよ。ばいばい」
「オレも好きだったよ」
小さく呟いた言葉はテリーに聞こえたかわからなかったけど玉座の間へと繋がる階段へと走ったときにテリーにその言葉に言われた時に思わず泣きそうになってしまったのはあたしだけの秘密。
あとがき
EDを無理やりテリバにした結果。
冒頭のセリフはゲームでテリーがカルベローナで言っていたセリフ。
何気ない言葉でもバーバラにとっては嬉しかったんだろうなと妄想しました。
次は主バも書きたいなぁ。テリバが一番ですが実は主バも好きなんです。
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10mm(20140604)
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