君と世界を天秤にかけた 


人になにを言われようが自分の決めた道を変えようとは思わなかった。目的のためなら手段を選ばないという考え方が結局は自分に合っていた。昔の自分が本来のものであいつらといた時は少しは明るくなれたけど結局昔の自分に戻ってしまった。全ての元凶であったデスタムーアを倒し、世界に平和が訪れた。見えてるものを犠牲にして見えないものに手を伸ばしてしまった代償は自分にはあまりに大きすぎるものだった。オレにはただアイツがいるだけで、それだけで良かった。自分にとって今の平和は偽り、まやかしのように感じてしまう。あの旅の間だけが自分にとって真の平和だったのではないかとどうしても考えてしまう。今の平和が崩れようが問題はない。今は世界のこととかより結局は自分のことしか考えることが出来なかった。アイツにもう一度だけ会いたい、それだけのためなら自分は世界の理すらも壊すだろう。


「…なにがしたいんだろうな、オレは」


腰かけていた石から立ち上がり、腰にぶら下げている剣を触る。ただ退屈な日々に飽き飽きして、刺激的なことを求めているのかもしれない。アイツに会えないのをわかってて旅をしているのはきっとそうすることで自分の寂しさを紛らわせているだけなのかもしれない。自分のことだというのに、どうしてこんなにも彼女を強く求めているのかも分からない。


(…理由なんて考えなくてもいい。オレは前を進むだけだ。)


襲い来る魔物を切りつけ、踏み潰す。余計なことは考えるな。アイツと会うことだけを考えろ。剣の柄を持っている方の手が魔物の赤くどろっとした血で汚れる。その血を拭くのも億劫になり放置する。もともと自分は汚れていた。アイツらと出会って綺麗な人間になれたつもりでも結局は化けの皮が破れ、世界の平和を壊そうとしている。そんなオレを見て、姉さんたちはどう思うだろうか。ここ最近、会っていない。アイツはこんなオレを受け入れてくれるだろうか。もしかしたら何してるんだ、と叱るかもしれない。それもいいな、なんて考える自分はあまりに滑稽だ。


「……ここは」


先ほどまでの思考を遮るように広い部屋にたどり着く。この邪悪な気配からしてここが終点だと自分のカンが告げている。血の臭いがこびりついているこの部屋はきっと過去のグレイス城で殺されたものたちのものだろう。部屋の中央には供物を奉げる為の祭壇がある。部屋はレックたちが話していたものと一致する。かえるの供物と怪しげな壺に入っている緑の液体を見る。魔物はこんなものが好きなのだろうか、とどうでもいいことを考える。祭壇の前に立つと邪悪な気配は更に強くなる。目を閉じて心に深く、強く念じると浮かび上がったのはかつての主のデュランの姿にそっくりな魔物だった。少し色が違うが本当にそっくりだった。魔物と形容するには纏っているオーラが少し違う気もする。魔物とはまた少し違ったカテゴリーなのかもしれない。魔王をも超える力を持っているコイツならもう一度世界を歪めさせることが出来るかもしれない。


「私を呼び覚ます者は誰だ?」


「…お前こそ何者だ」


挑発するように問いかけるが奴は動じない。


「私は破壊と殺戮の神ダークドレアムなり。わたしはだれの命令もうけぬ。すべてを無にかえすのみ。」


「…ふん。望むところだ」


ダークドレアムが剣を構える。相手は自分より確実に格が上だというのにオレは不思議と冷静だった。口元には笑みすらも浮かぶ。


「戦おうぜ、神サマ」


オレはお前に会って抱き締めたい。それだけだ。そのためならこの命だって、この世界だって惜しくない。





あとがき


ED後のテリーの話。少しダークな感じの話。こういう話が実は大好物だったりします。EDでテリーがダークドレアムと対峙していたのが凄く気になります。一応ダークドレアムのダンジョンって夢の世界の方のダーマ神殿から行ける場所なんですけどね…。


title*Poison×Apple
(20140602)


   end 
bkm

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