あたしたちに新しい仲間が出来た。ミレーユの弟のテリー。愛想は悪いけど、かっこいいしお姉さん想いだし悪い奴じゃないよね!なんて思ってたけど前言撤回。テリーは間違いなく性格悪い!なんであたしがそんなことを言うかってそれはまず口が悪くて嫌味っぽいことばっかり言ってくるから。寛大なバーバラちゃんでもこれには耐えられない。しかもあたしにばっかり言うんだから!太ったなんてあんたには言われたくないわよ!レックもハッサンもテリーの言葉に大爆笑。フォローしようとしてさらに傷を広げるだけのアモスと笑いを堪えてるチャモロ。ムカつく。ムカつく。あたしは戦闘中なのにもやもやとそんなことを考えていたのがいけなかった。
「危ないっ!」
突然テリーが大声を上げた。気付いたときにはあたしはテリーに守るように抱き締められていて何が起きたのか分からなかった。魔物の爪がテリーの背中を深く抉るのが見える。血が噴き出し、魔物がとどめをさそうとするところでミレーユのメラゾーマが直撃して魔物は消滅した。
「……て、テリー……あ、あたし…」
テリーの顔色がだんだん生気のなくなっていき、背中から血が止めどなく溢れている。それに伴いテリーの息が荒いものになっていくのを見てすぐに駆けつけたチャモロとミレーユがベホマで治療する。あたしはただ泣いていた。あたしがぼーとしていたから戦闘中だったのに、この辺の敵はあまり強くないって油断していた。そのせいであたしはテリーに大怪我させてしまった。
「バカ…泣くなよ」
傷が治ったテリーがあたしの頭をポン、と叩く。
「…だ、だって…あんなに血が…」
「姉さんとチャモロが回復してくれたから大丈夫だ。」
「で、でも…」
「俺は平気だから、気にすんなよ」
まるであたしを突き飛ばすような言い方に胸が痛くなる。違うんだよ、テリー。怪我のこともそうだけどそれ以上にあたしの不注意でこんなことになってしまったのに…なんでテリーは許してくれるの。こんな思いするならいっそ怒って欲しかった。
***
ミレーユが風呂に入りに部屋から出ていって一人になった。気づいたらあたしは宿屋から外に出ていた。まだ胸が痛い。怒ってほしいと思ったのは結局自分が許して欲しかっただけだ。なんであたし自分のことしか見えないんだろう。
「…はあ」
テリーにも仲間たちにも合わせる顔がない。あたしはいつも同じ失敗ばかりでこのままじゃあたしは皆から必要のない存在に思われてしまうんじゃないかってどうしても考えちゃう。みんなは優しいから絶対にそんなことは言わないはずなのに。じゃあ、言わなくてもそう思われてたら…?
(どうせ消えるんだから)
今、皆から離れていったって早いか遅いかの違いなだけ。ならあたしは皆と一緒にいても意味がないじゃない。あたしの実体はもうこの世界にはないなら、あたしが旅している目的って現実世界から消えるためじゃない。
(いやだ…)
もう何も考えたくない。なんであたしは弱いんだろう。なんであたしは夢の中の存在なんだろう。そんな思考を遮るようにぎゅうっと後ろから抱き締められる。
「テリー………?」
抱き締めてきたのはテリーだった。首を少し動かしてテリーを見る。いつも頭にかぶっている青のターバンは今はなくて綺麗な銀の髪が風に揺れる。
「……心配させんな、馬鹿」
更にぎゅうっ、と強く抱き締められる。胸がきゅうぅってなってなんだか凄く泣きたい気分になった。
「言葉足らずかもしれねえけど、オレはお前のこと結構好きだぜ」
それってどういう意味?と聞きたくなったけどその言葉は飲み込む。もう本当にテリーったら言葉足らずなんだから。
「……あ」
テリーの体が離れて少し残念。
「ほら、手、繋いどけよ」
テリーが少し歩いてこっちを向いて手を差し出してそんなこと言うから凄く嬉しい。
「なに笑ってんだ、置いてくぞ」
夜の暗闇でも分かるぐらいにテリーの耳から首が真っ赤で可愛いなぁって思ったりもする。
「あたしもテリーのこと結構好きだよ」
「…あっそ」
素直じゃないなぁ。でもそういうところも好きだよ。繋いでいる手を少し強く握りしめたらテリーも強く握りしめてくれた。
あとがき
これはシリアスなのか甘い話なのかどっちなんでしょうか。やっぱ両片想い好きです。仲間以上恋人未満いいねぇ。
title*
10mm(20140529)
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