指先が触れ合うだけで何故こんなにも心臓が大きく跳ねるのだろう。


すぐ隣に歩いているアルスを見上げる。私と同じぐらいだった背丈は今まで来なかった成長期でも来たのか、あの旅を終えてから首を上げなきゃ顔が見れないぐらいに急激的な成長期を迎えた。顔つきも少年のあどけなさを少し残しつつも青年らしいものになってきた気がする。簡単に言えば信じられないぐらいにかっこよくなった。町を歩けば年若い女達が噂をするぐらいに。


「どうしたの、マリベル?」


「なんでもないわよ」


気の知れた幼馴染みだというのに二人の間に流れる空気は何だかぎこちない。
ぷいっと顔をそらして大股で歩いてもアルスには痛くも痒くもないんだろう。私の歩幅に合わせてアルスは歩いてくれていた。小さい頃は私がアルスの歩幅に合わせていたというのに。
アルスが私に追い付くとまた肩が触れ合うような距離で歩く。指先もたまに触れ合うと逃げ出したくなるぐらいに熱が集まってきている顔をアルスに見られないようにアルスから話しかけられても目を合わさない。いや、合わせられない。


「マリベル、なに怒ってるの?」


「怒ってると思うなら私に何かアクセサリーでも買いなさいよ。とびっきり高いやつをね!」


私のいつもの我が儘にアルスは困ったように頭を掻いた。しばらくお互い無言で歩いているとアルスが触れ合った指先を絡めるようにして手を繋いだ。
びっくりして斜め上にあるアルスの顔を見上げるとそこには首まで赤くなったアルスがいて目が合うと照れくさそうに笑って手にギュッと力を込めてきた。


「アルスのくせに生意気よ」


私は照れ隠しにそう言うとアルスに応えるように手にギュッと力を込めた。





(20141004)



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