たまに不安になることがある。 これは夢なんじゃないかって。 幸せな夢はいつか覚めてしまう。覚めてしまったらまた君がいない世界で生きていかなくてはならないのかと怖くなってしまう。 すぐ隣ですやすやと眠っている少女の緑色の髪を触る。 「…シンシア」 囁くように小さく名前を呼ぶと少女は眠っているというのに幸せそうな顔をした。 「もうどこにも、行くなよ…」 少女の胸に顔を寄せると温かい鼓動が感じられた。人の鼓動はこんなにも人を安心させるものなのだろうか。 「…ソロ?」 「ゴメン、起こした」 「また眠れなかったの?」 「…うん」 眠れない赤ん坊を落ち着かせるような母みたいな優しい声色に少し泣き出しそうになってしまう。眠れない夜は少しセンチになってしまう。 「大丈夫。私はずっとソロといるよ。二度とソロの前からいなくなったりしないから。ね?」 シンシアにそのまま抱き締められる。胸に押し潰されて少し恥ずかしくて、苦しかったけど嬉しかった。 さっきまで緩やかだった鼓動が速くなって自分まで恥ずかしくなってきた。 「シンシアのばーか」 「え、えぇ?」 照れ隠しに呟いた言葉にシンシアが目を真ん丸くするのが容易に想像出来て、クスリと笑ってゆっくりと目を閉じる。目を閉じればシンシアの鼓動がハッキリと感じられた。 その鼓動は最愛の少女、シンシアがちゃんと生きている証だ。 (20140826) |