恋を知った少年は



あぁ、これが恋か、と妙に納得した。自分よりも大切にしたいと、守りたいと思える存在になったのはいつからだろうか。初めて会った時は今まで見たなかで一番綺麗な人だなぁ、とは思った。美人にありがちな鼻にかけたような性格ではないし、控えめで冷静沈着で少し抜けたところがあって好感を持った。それをハッサンに言えば、ああいう女が好きなんだな、とニヤニヤしながら言われた。ボクは彼女の人柄に対して好感を持っていると言えばそれって好きってことだろ、とニヤニヤした顔から一転呆れたような顔で言われた。
結果的にハッサンの言う通り、ボクは彼女に対して仲間以上の、恋愛感情に近いものを抱いた。
それでもこの恋は打ち明けてはならない。きっと彼女の迷惑になるから。彼女自身そういう対象になるのは嫌がるし、ボクを他の人に重ねて見ているわけで、つまりボクのこの恋が叶うことはないのだろう。


「それってよぉ…ただお前が自分に自信持てねえからじゃねえのか?」
「自信…確かに実際外の世界に出てみると思ってたものよりも違ったし、ハッサンもミレーユも強くて正直あまり自信がなくなったよ。」
「いや、そういうことじゃなくて…んー、なんて言えばいいんだろうなぁ。あー、お前はミレーユにフラれる前提で考えてるだろ?」
「それは当たり前だろう?」
「そうじゃなくて!フラれてもいいから伝えたいとか少しでも可能性があるならとか思うだろ!?普通」


ハッサンが頭をかきむしってそう叫んだ。


「うーん、そうか…そういう考え方もあるんだ。うん、勉強になった。ありがとうハッサン」
「お、おう…」


ハッサンはひきつった顔で溜め息をついた。
ボクはまた何か変なことを言ってしまったのだろうかと不安になったがハッサンはそのままどかっと地面に寝そべった。ボクも同じように寝そべる。視界を占めるのは満点の星空で感激の息を漏らす。城で暮らしてたら絶対にこんな星空には巡り会えなかっただろう。


(ムドーを倒してからもこうやって旅をしたいな。あとは山奥で自給自足の生活も楽しそうだ。)


やりたいことがいっぱい頭に思い浮かぶ。どれも絵空事に過ぎない。


(あとは…ミレーユと一緒にいたいな。恋人としてじゃなくて仲間でも、弟でも何でもいいから)


次に思い浮かんだのはミレーユだった。ただそばにいたい。一緒にいるだけでそれで満足だ。だから多くは望まない代わりにずっと一緒にいたいという願いさえ叶えばいいのに。
そんなことを考えると目の前が満点の星空から金の糸に覆われた。


「ミレーユ?」
「あら起こしちゃったかしら…ごめんなさい。何も掛けてないと風邪引くと思ってこれ」


ミレーユがふわりと毛布を掛けてくれた。ミレーユの慈愛に満ちた顔で微笑まれると少し気恥ずかしい。自分がミレーユよりもまだまだ子供だという事実を思い知らされるから。


「街での用事は済んだの?」
「…えぇ」


ボクの問いかけにミレーユの顔はみるみるうちに曇っていく。そんな顔をさせたかったつもりじゃないのにという気持ちとこのミレーユがそんなにも必死になる理由を知りたかった。


「なにか探してるんだっけ」
「………………」
「ごめん、今のは聞くべきじゃなかった」
「ごめんなさい。まだ、言えない…。そのうち話したいとは思ってるんだけど…怖くて、それに長くもなるし…またの機会に…」
「うん」


また壁を作られた。その事実に胸がキシキシと悲鳴をあげる。
ミレーユのことがもっと知りたい。それだけなのに。


「どうせ寝れないし、ミレーユ寝なよ。ボクが見張りしとく」
「ダメよ。あなたは成長期なんだから。こういうのは大人に任せときなさい」


またこうやって、大人ぶる。
ミレーユにそういう態度をとらせてしまう自分が憎い。


「でも、ミレーユは女性なんだし…」
「でも、じゃありません。私はあなたを守る使命があるわ」
「……うん」


何を言ったってミレーユは見張りを譲らないのだろう。
諦めて地面に寝そべるのも嫌でその場で体育座りをするとミレーユが不思議そうな顔をした。


「寝れないのは本当だから一緒に見張るよ」
「そう、貴方けっこう頑固ね」


ミレーユがくすりと笑ってそう言った。
ミレーユとたわいない話をするだけで、ミレーユの新しい一面を見るたびに欲張りになる。
無欲だと言われたボクでも欲張りになってしまうほど恋というものは人を変えてしまうのかもしれない。
ボクは改めて恋というものを知った。





title*色々。
(20150314)



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