余韻に気付くはずもなく




*捏造あり


月×日


最近、体調が悪い。全体的に身体がダルいというか力が入らない。常に眠気に襲われる。
ーー別れが近づいてるから…?
レックが伝説の装備を手に入れていくたびに身体がどんよりと重くなる。あたしの身体の異変に最初に気づいたのはチャモロだった。チャモロにゲントの村に伝わる薬等を投与してもらったけどあまり効果は著しくなかった。


月△日


ミレーユやテリー、アモス、ドランゴにも気づかれた。あたしの思いを察してか旅についてくるのはやめろとは言われなかったけど無理なようだったら言ってほしい、と言われた。本当は辛いけどそれでも皆と一緒にいたかった。





あの鈍いハッサンにまでバレてしまった。レックにバレるのも時間の問題かもしれない。ブボールからマダンテを継承してから更に身体が重くなった。皆とのお別れがまた近付いたのかもしれない。







△月×日


明日が最終決戦だ。決戦前夜ということもあって皆は少し固い表情をしていたけれどアモスの過去の失敗談とかを聞いたりドランゴにくっつかれてるテリー等を見てたら皆の雰囲気がいつものようなお祭り騒ぎになった。最後までなんか締まらないわね、とミレーユが呆れながらも微笑んでた。
少し早めに眠りにつこうとしたらいきなりレックに呼び止められた。
とっくにバレてた。










「身体は大丈夫か?」
「うん。デスタムーアを倒してから嘘のように身体が軽いの!だから大丈夫。」


本当は嘘。今にも意識を手放してしまいそうなぐらいに強烈な眠気に襲われている。


「嘘、つくなよ」
「…ごめんね」
「なんで本当のこと、言ってくれないんだよ。」
「ごめん、ごめんね」


血が出てきそうなぐらいに強く唇を噛み締めているレックを見てるのが辛かった。爪が食い込んで血が滲み出ている手も何かを堪えてるような苦しげな表情も、何もかもが辛かった。原因は自分だということは分かってるのに何も言えなかった。今なにを言ってもただの言い訳になってしまいそうで。


「お前がこんなに苦しむならデスタムーアなんて倒さなければ良かった。」
「ううん、あたしは苦しんでなんかないよ。だから、そんなこと言わないで」
「違くないだろ!?バーバラ、お前さ、今自分がどんな顔をしてるか分かるか。今泣きそうな顔してるぞ。全然隠せてない」


レックがあたしの頬に触れる。
あぁ、怖いな。
今まで頑張って隠してきたのに。
最後の最後でダメになっちゃうなんて。
レックが逃がさないと言わんばかりにあたしの腕を爪が食い込むぐらいに強く掴む。


「もうさ、あたしのことは放っといてよ」
「え」
「あたしね、レックよりもテリーの方がタイプなの。だってイケメンだし」


あたしは何を言ってるのだろう。


「…そっか」


レックの手から力が抜けて掴まれていた腕は行き場を無くしたように下がる。
俯いたレックの顔は前髪でちょうど隠れて見えない。きっと怒ってるんだろうな。


(いかないで)


去っていくレックの背中に抱きつきたくなる衝動を必死に抑えた。

(まだお別れしたくない)


遠くなる背中を見失わないようにずっと見つめる。


(もっと、一緒にいたい)


待って、という言葉は遠くに行ってしまったあなたには届かない。





余韻に気付くはずもなく
(結局こんな結末)
title*Poison×Apple
(20150121)



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