幸せでした、最後まで






どうせ一緒にいられないなら、一緒に死んでしまおうと思った。
明日からレイドックで行われるパーティのためオレたちはレイドック城の客室で泊まった。
他の仲間達が寝静まった頃にバーバラを自分の部屋に呼び出すのはとても容易いことでバーバラは何の疑いもなくオレの部屋に踏み入れ、ベッドに座る。


「あたしたち…、デスタムーアを倒したんだよね」
「あぁ…」
「何だか今でも夢みたい…、」


バーバラがオレの肩に頭を預けて小さく呟く。ふわりと香る女特有の匂いにやられ生返事しかしないオレに呆れることもなくバーバラは更にオレに体重を預ける。


「おい、」
「なぁに?」
「お前はもう少し痩せろ」
「なによー!重いって言いたいわけ?」
「フン…、なんだ分かってるじゃないか」
「相変わらず嫌みったらしいわねぇ…」


クスクスと笑いあう。こんなやり取りが楽しくて、いつまでも続けたいのにそれすらも許されなくて、オレの口からそのうち乾いた笑いしか溢れなかった。


「テリー? なんで、泣いてるの?」
「バーバラ…」


バーバラの体を強く抱き寄せ、バーバラの頭を手で押さえつけて無理やりキスをする。
抵抗しようとジタバタと手足を振り回そうとするバーバラの後頭動脈を両手でキスしながら押さえるとバーバラの目がとろけたような感じになる。血流が止まり、意識が朦朧とし始めたバーバラの手を使って自分の後頭動脈を押す。
何度も、何度も、何度も、何度も。
やがてオレの力も抜けきり、支えを失ったバーバラはベッドに体を横たえ、オレもバーバラに覆い被さるように崩れ落ちた。

この方法じゃ気絶するだけで、死なないことは分かっていた。オレは結局怖かったのかもしれない。自分の愛する少女を殺すことも、どうしようもない自分自身を殺すことが。


朝起きれば、バーバラは昨日の一体なに!と腰に手を当てオレの耳を引き千切れそうなぐらいに強く引っ張った。


「魔が差した」
「あんたねぇ…、あたしはあんたに殺されるかもって思ったんだからね!」
「悪かったって…」
「もー、絶対反省してないでしょ」


何も答えないオレにバーバラは呆れたような溜め息をつき、オレの耳から手を離すと少ししゃがんでオレの唇に自分の唇を押しつけた。


「テリー、そんなにあたしと離れ離れになるの、辛い?」
「…」
「忘れちゃっていいんだからね、あたしのことなんて。あたし以上にいい女はあまり見つからないかもだけど、あんたの無駄に良い顔があれば女なんて選びたい放題でしょ。」
「じゃあ、お前はあっちの世界で男、作んのかよ」
「それは…つ、作るに決まってるじゃない!テリー以上にいい男なんてわんさかいるだろうし?このバーバラ様の美貌を持ってすれば選びたい放題よ?」
「今にも泣きそうな顔で言われたって、いまいち信じられないな」
「ホント、いじわる。あたしがっ、わざわざ、突き放そう…って、してんのに…、ホント、しんじられない!」
「お前は嘘が下手くそだからな。慣れないことなんてするな」
「う、うるさいっ!もう…、男の子に泣かされたの初めてなんだから…責任、取ってよね!」


泣きじゃくるバーバラの体を抱きしめて背中をポンポンと優しく叩く。


「テリーのばか」
「はいはい」
「ヘタレ男!あんぽんたん!大好き!」
「………」
「はあぁ…スッキリした!」
「良かったな」
「うん…これで最後、だもんね。こんな喧嘩みたいなよく分かんないやり取りも、こうやって恋人らしくくっつくのも全部、全部最後、なんだよね」
「そう、だな」
「最後まで、あたしを好きでいてくれて、あたしに幸せな時間をくれて、ありがとう」
「それはこっちの台詞だ。ありがとな、バーバラ。ずっと愛してる」
「ぷっ、似合わないキザな台詞!」
「余計なお世話だ」




title*色々。
(20150802)







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