好きなら好きってはっきり言ってよ!





「お前、いつ告白すんだよ?」


「またその話かよ」


宿屋に泊まると必ず、こういう話を始める。特にリーダーであるレックが。面倒くさいと思いつつも無視すれば更に面倒くさいことになるのは想像がつくから渋々返事をする。


「だってオレがバーバラと話してるだけでお前めっちゃ睨んでくんだもん」


「睨んでない」


「あー、殺気を感じると思ったらお前のだったか」


レックだけではなくハッサンにまで言われるとさすがにうっ、と言葉に詰まる。チャモロとアモスも同意するように頷くといよいよ味方はいなくなった。


「もう告白したらどうですか?」


チャモロの言葉にオレ以外の奴等がそうだそうだ!と賛同した。


「告白するつもりはない」


ただ好きなだけで、自分が付き合うとかそういうのが全く想像出来ないからだ。今まで特定の女性なんて作らなかったし、そういうのとは無縁だと自分で思っている。


「絶対に後悔しますよ?私の経験上」


「お!アモスの話聞きたい!」


レックが身を乗り出して目をキラキラさせる。人の恋愛話を聞きたがるなんて女みたいだ。結局アモスの過去の恋愛話を無理やり聞かされ、涙もろいハッサンはティッシュを何枚も消費して、レックとチャモロも涙で目を潤ませていた。オレはそんな客観的にアモスの話を聞くことが出来なかった。まるで自分のことのように話を聞いてしまったのが恥ずかしくてくだらねー、と呟いてベッドに入った。ベッドに入ってから頭に浮かんだのはバーバラと二度と会えなくなってしまったら、という突拍子のないことだった。


***


深夜に目を覚ます。嫌な夢を見た。バーバラに二度と会えなくなる夢を。そんな馬鹿な…と思いつつも妙に現実じみていて近い未来そうなる気がして怖かった。そして、今すぐにバーバラに会いたくなった。隣の部屋は姉さんとバーバラだが女性の部屋に忍び込むのはさすがに出来ない。レックなら遠慮なく入っていきそうだけど。
ベッドから出て寝間着から普段着に着替える。夜の散歩もたまには悪くないだろう。


「テリー?どこに行くの」


部屋から出て階段を少し降りているとガチャという音がして振り返るといつも高く結い上げている髪を下ろし、白いネグリジェ姿のバーバラがいた。いつもと違うバーバラに顔が熱くなっていくのが分かった。暗くて本当に良かった。


「起こして悪いな」


「それは、別にいいけど…テリー、あんたどこに行くの?」


「散歩」


「あ、あたしも行くから待ってて!」


バーバラが慌ただしく部屋に戻った。まさかついてくるとは思っていなかった。少しするといつもの服に着替えたバーバラがレッツゴー!と腕を引っ張る。宿屋の外に出ると少し夜風が寒かった。


「髪は結んでないんだな」


バーバラの長い髪が風に揺れる。


「だって時間なかったんだもん。あんまり時間掛けてたら絶対にテリーは先に行っちゃうでしょ?」

「そんなに時間が掛かるもんか?」


「めっちゃ掛かるよ!髪がなかなかまとまってくんないし!あんたはいいよね!サラサラだし」


バーバラがオレの髪に触れる。優しい手つきが姉さんに似ている。

「テリーは変わったね」


「そうか?」


自分じゃ分からないがこんな馬鹿でお人好しな奴等に囲まれているのだから嫌でも変わるかもしれない。


「テリーが仲間になった時は凄くミレーユに執着してたし、あたしたちと積極的に関わろうとしなかったじゃない」


「そうだったか…?」


「そうでしたー!あたしさ、そういうテリーが凄く嫌で、何とかしてあげたいって思ってた。」


「お前、お節介だもんな」


でもそのお節介にオレは救われた。


「なによー!感謝してるでしょ?」


「あぁ、そうだな。本当に感謝している」


「今日は珍しく素直だね!」


偉いぞー、と背伸びをしながらわしゃわしゃと髪を撫でられる。


「あたしも変わりたい」


「………」


「テリーにさ、自分が一番可哀想っていう顔してるって言ったことあるじゃん?」


「あぁ、あったな。」


「あれ自分のこと言ってたんだよね。」


バーバラが悲しげに笑った。バーバラの言っている意味も悲しげに笑っている意味も分からなかった。考えてみればオレは表面上のバーバラしか知らない。笑顔の仮面の下のバーバラのことは一ミリも知らなかった。


「な、なんちゃーって!」


「バーバラ」


もっとバーバラのことを知りたい。今言わなければいけない、とそんな気がした。


「な、なに…?」


「オレはお前ともっと一緒にいたい」


「うん。一緒にいるよ」


「だから、もっとお前のことが知りたいって言ってんだよ!」


「うん。あたしもテリーのこともっといっぱい知りたいな」


バーバラがニッコリと笑ってそう答えた。オレの言いたいことが全く伝わってないことについ溜め息を漏らす。


「この鈍感め。お前のことが好きって言ってんだよ」


突然の告白にバーバラの目が大きく見開かれ、途端にバーバラの顔がボフンと赤くなった。


「えぇぇぇ!!!!!」


「そんなに驚くことないだろ。あんなにアプローチしてたっていうのに…」


普通の仲間にあんなこと言わないし、やらないだろ、普通。


「好きなら好きってはっきり言ってよ!テリーは分かりにくいんだから!あたしがテリーのせいでどれだけ一喜一憂してたと思ってんの!」


「ふぅん…お前、オレのこと好きなんだ?」


ニヤニヤと笑いながら俯いているバーバラの顔を覗きこむ。顔を真っ赤にして、眉を寄せながら目を潤ましている姿に理性が崩れかける。


「好き…だよ…。テリーのことが、好き」


(反則だろ…)


バーバラがキュッと手を繋いできた。


「目、閉じろ」


小さく頷いて目を閉じたバーバラに顔を近付け、唇を合わせた。





(20140809)

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