その人、こんなに想われて幸せだね



好きな人はお前だ、とは言えるはずもなくバーバラの質問攻めにも曖昧に答える。こんなやりとりがかれこれ一週間している。


「なんで教えてくれないの?教えてよ〜!教えてくれたら協力してあげるのに!」


「やだ」


「う〜!分かった。好きな人が誰かは聞かない!テリーの好きな人をあたしは知らないだろうしね」


やっと諦めたか。女っていうのはどうしてそんなに人の恋愛事に首を突っ込みたがるのかが理解出来ない。


「だからね!その人のどういうところが好きなのか教えて?」


「……知ってどうすんだよ」


「テリーがどういう子が好きなのか個人的に気になるんだよねー!それにこういう話って聞いててドキドキするし!」


バーバラの満面の笑みにいつもは心が温かくなるのに。今は心が冷えていくのが分かった。わかってしまった。バーバラはオレを一人の男として、恋愛対象として見ていない。ただの友達だと、そう思われているのがただ悔しかった。


「じゃあ教えてやるよ」


教えてしまえばバーバラはもしかして自分のことだろうか、と気付いて意識し出す可能性もなくはないだろう。


「やった!」


「そいつはとにかく馬鹿で、チビで、子供で、ぎゃあぎゃあうるさくて、能天気で、」


「ちょっと待って!好きなところじゃなくて、それ貶してない?」

「貶してるんじゃなくてそういうとこも好きなんだよ。」


「へ、へえ…。テリーって変わってるね」


バーバラが苦笑いをする。


「見てないようで意外とよく人を見てて、素直で思ったことをすぐ口にするやつで、天真爛漫で喜怒哀楽が激しくて、よく分からないところで怒るけど甘いものをやったらすぐに笑顔になる。」


「……………」


気づいたらバーバラが目をキョトンとさせてオレを見ていた。少し喋りすぎたかもしれない。こんなに喋ることが出来たのかと自分でびっくりした。


「なんか、羨ましいな…」


バーバラが心底羨ましそうに目を細めた。オレはバーバラの言った意味が分からず何が?と聞いたがバーバラはフリフリと顔を横に振って何でもないと答えた。


「その人、こんなに想われて幸せだね」


バーバラは切なげに眉を下げながら小さく呟いた。その表情は今まで見たどの表情よりも辛そうだった。
結局バーバラはオレがバーバラが好きだと一ミリも気づかなかった。あんなにいっぱい語ったのは何だったのかと頭を抱えたくなったが途中からヒートアップしてしまったのは自分だということに更に頭を抱えたくなった。





(20140801)


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