好きな人いるなら協力してあげる!





とっくに死んだと思っていた姉が生きていて、色々あって仲間になった。オレが仲間になった頃には既にあいつらには強い絆があった。戦闘時には声を出さずとも息のあった攻撃で敵を次々と倒していく。戦闘時だけじゃない。食事の時にでさえ強い絆が感じられる。例えばレックがあれを取ってと言えば姉さんがはい、と渡す。それを周りの奴らはすっかり夫婦だねぇ、と冷やかす。そのあたりの会話もまるで漫才のようにトントン拍子で進んでいく。宿屋に泊まるとまた全員で大騒ぎし出す。男部屋に女性陣も来ていきなり枕投げをやり始める。ハッサン曰く恒例行事、らしい。驚いたのは最年長者のアモスが一番ノリノリだったことやあの姉さんが子供のような無邪気な表情でレックに枕を投げつけていたことだった。


「ミレーユはレックのことが好きなんだよ」


バーバラがオレにこっそり耳打ちをしてきたその内容に何かが失われていくような喪失感を覚えた。もう姉は自分のものだけじゃない。自分だけを見てくれるわけじゃない。姉には仲間が、好きな人がいる。


「テリーって本当にミレーユが好きなんだね。顔に傷ついてますって書いてあるもん。」


「お前に何がわかるんだよ」


何にも知らないくせに。どうせ、お前は何も知らず幸せに、両親に大事に育てられたんだろ。


「分からないよ。だって、テリー何も言ってくれないんだもん。それにテリーって自分が一番可哀想って、そんな顔してる。そういうのあたしはあんまり好きじゃないなぁ」


バーバラの言葉がやけにオレの胸の深いところにグサリと刺さった。何も考えないでお気楽に旅をしていると思っていたがそうではないらしい。そして、本当の自分を少しだけ見つけてくれた。オレの中でバーバラの見方がまるっきり変わって、好きな人に変わった瞬間だった。


***


「あーあー!なんか面白いことないのかなぁー!」


「なんだよ…面白いことって…」


あの会話以来、オレの隣にはいつもバーバラがいた。仲間たちの会話になかなか入ろうとしないオレにバーバラが焦れて、自然に巻き込んでいった。今ではレックやハッサンにお前らホントよく喧嘩するよなぁ、と呆れるぐらいにオレとコイツは互いに言いたいことをぶつけてきた。そんな関係がとても心地よくて少しだけ苦しい。初めは一緒にいるだけで充分だと思っていた。その思いと裏腹に欲望が大きくなった。一人の女にこんなに執着してしまう自分自身が理解出来ない。バーバラは確かに顔立ちは整っているし、普段は子供っぽいが髪をおろしたら意外に美人だ。でも綺麗な女なんてこれまでいっぱい見てきた。だとしたらバーバラの性格に惚れたのだろうか。


「まだ認めたくないな…」


「ん?何の話?」


「なんでもない」


「えぇー!教えてよー?」


バーバラがねえねえ、と裾を引っ張ってくる。近くなった距離に少しだけ胸が高鳴ったがそれを顔には出さずにバーバラの頭にチョップするとバーバラが痛みにその場で踞った。


「あ、分かっちゃったかも〜!」


うひひ、と変な声で笑うバーバラの頬を摘まんで力一杯引っ張ると思いの外よく伸びた。


「い、いひゃい〜!こりゃあ〜離せ〜!」


パッと離すとバーバラが頬を擦りつつ、ニヤニヤと笑いながら体当たりをしてくる。


「なんだよ」


「テリーのことなんてぜーんぶ分かっちゃうんだからね!恋でしょ!テリー、今っ!恋してるでしょ!」


「な、なんでそうなるんだよ!?」


的を射た言葉にギクリとする。コイツ、けっこう鋭い。


「好きな人いるなら協力してあげる!」


あぁ、コイツ鈍感だ。



(20140731)

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