ボクラノキセキ
グレベロ、広木→皆春。広木が報われなさすぎる。
:
「グレンって両利きなんだな」


剣の手入れや供物の確認をしていたグレンを見てベロニカはふと呟いた。


「そうですね。利き腕怪我してからは両利きです。」
「ふぅん…」


書類に羽ペンでサインしていたベロニカがグレンの元へ行くとグレンの右腕にそっと触れた。


「べ、ベロニカ様っ!?」
「痛むか…?」
「い、いえ、もう大丈夫です。ですから、その…」


ベロニカの白くて細い指先がグレンの傷跡にそっと触れる。目を伏せて何度も、繰り返し触れるベロニカにグレンはどうしたらいいか分からず眉を八の字にした。


「争いのない世界なんて絶対にあり得ないけど、でも、なるべく少なくなるといいな。そうしたらグレンみたいにこれ以上傷つく人も…」
「ベロニカ様…」


至近距離で見つめ合う2人を咎めるようにリダが小さく咳払いをするとグレンは慌ててベロニカから離れた。


「リダ!戻ったのなら早く言えば良かったなのに!」
「なかなか言いづらくて…申し訳ありません、ベロニカ様」
「ふふっ、別にいいよ。おかえり、リダ」


頬をほんのり赤く染めてるグレンに対し、ベロニカは先ほどのことがなかったかのように笑った。そのことにリダは少し哀れに思ったがそれも当然のことだ、とグレンをベロニカの部屋から追い出した。


「リダ!なぜグレンを追い出す?」
「グレンがいるとベロニカ様は仕事を放棄していつも遊んでるではありませんか」
「遊んではない。話をしてたんだ」
「同じことです。それに騎士見習いを部屋に入れる等…」
「別にいいじゃないか。」


ベロニカが少し唇を尖らせて小さくリダの意地悪と呟いた。


「…最近、ベロニカ様はグレンのことを気に入っていますね」
「ん?そうかな?確かにグレンといるととても楽しい!自分の狭い世界が広がるような気がする!」
「………」
「ん?もしかしてリダ、嫉妬…したのか?」
「そういうわけではありませんが…ベロニカ様が、グレンのことを」
「好いてると?」
「はい」
「確かにグレンのことは好きだけど、そういう意味ではないよ。私は国で決められた相手と結婚すると、そう決まってるからな。だから、正直そういう好きは、よく分からない」


ベロニカが困ったように笑う。そんなベロニカにリダは顔を曇らせた。リダから見たらベロニカはグレンに惹かれてると思わずにはいられなかった。グレンと話してる時のベロニカは本当に楽しそうで幸せそうで一番美しかった。先ほどもあんなに愛おしそうにグレンに触れていて、思わず息を飲んでしまうぐらいにグレンとベロニカはお似合いだった。


***


春湖は隣で歩いている皆見をチラリと見た。


(私はあの後、本当にグレンとベロニカ様が恋人になったと勘違いしたけど、でも2人はやはり両思いだったのかもしれない。皆見自身が気付いてないだけで…)
「春湖?」
「え?」
「なんか俺の顔に付いてる?」


皆見の言葉に春湖は自分がずっと皆見の顔を見ていたことに気付き、慌てて両手で違うの!と言った。


「ほんとに?」
「う、うん。ごめん、色々考えちゃって…」
「春湖」


皆見が春湖の手を握ると春湖は頬を染めておずおずと皆見の顔を見上げた。皆見は赤く染まった頬を隠すようにぷいっと顔を逸らした。


「ねえ、皆見」
「ん?」
「グレンと会えたら、どうするの?」


皆見はキョトンとした後、うーんと考え始めた。


「あんまり、思いつかないなぁ…」
「そうなの?仲良かったからいっぱいあるんだと思ってた」
「春湖またベロニカとグレンが恋人とか疑ってるつもりか?」
「ち、違うの!た、ただ気になって…」


もしグレンが現れたらきっと皆見は自分の本当に想いに気付くかもしれない。だって、2人は両思いだったのだから、と春湖はずっと考えていた。


「グレンに会ったら俺、彼女出来たよって言うよ」
「え」
「それで、こんなに可愛いんだぞ、いいだろ?って自慢してやるんだ」


どう?と皆見は春湖に笑顔を向けた。


「ずるいよ、晴澄…」


泣き出してしまいそうな春湖を皆見は自分の腕で抱き締めた。


「あー!学校帰りにいちゃいちゃしてるー!」
「わわっ!」
「ひ、広木と西園!」


皆見はすぐに腕を解き、春湖から離れる。
学校から近い通学路で抱擁をしていた事実に皆見と春湖は顔から首、耳まで真っ赤にした。


「ごめんねー。邪魔しない方がいいかなぁって思ったけど結構目立つからさ。ね、百花」
「う、うん。ごめんね!あたしたち帰るから!ほら、悠!帰ろ!」


皆見と春湖に負けず劣らず顔を真っ赤にした百花が広木の腕を引っ張って慌てて走り出した。


***


「悠、大丈夫…?」
「んー?大丈夫だよ。体力はあるし」
「そ、そうじゃなくて!その、グレン様はベロニカ様のこと…」
「うん、まぁ、」


曖昧に笑う広木に百花はぎゅっと抱き着いた。


「あたし!春湖の味方でもあるけどっ、悠の味方でもあるからね!だからっ、何でも言ってね!」
「ふふ、ありがと百花。でもそれじゃ結局どっちの味方ー?」
「えー、えっとどっちもだよ!」
「百花らしいね。ありがと」


広木は百花に見えないように頬から涙を流した。


(20160731)



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