本日は晴天成り。そんな安っぽい台詞が似合うほどに晴天な本日、私は家族が増えました。今は彼らが住むというマンションへ行くべく、ジュリと一緒に地図片手に向かっています。


「嗚呼おいこら、地図をぐるぐると回す奴があるか。」

「仕方ないじゃない、方向音痴何だから。ところで此処はまだ地球ですか。」

「一体何処へ行くつもりなんだ、お前は。」


肩の上に乗ったジュリが溜め息を吐いた。リスに溜め息を吐かれる私って一体…。

貸してみろ、とジュリが言うから地図をジュリが見易い様に拡げてみた。お父さん手描きの暖かみ溢れるお手製の地図だ、普通にGoogleマップの地図のコピーが欲しかったよお父さん。何でこんなことだけ無駄に暖かみにこだわったんだい、何処の匠だよ。此処はあれか、道すがら誰かに聞くべきか。よぉし、可愛い女の子捕まえるぞ。


「ふむふむ、成る程な。マリー、其処を左だ。」


何故分かる。



女の子を捕まえる必要もなくあっけなく目的地へと着きましたとさ。いざ、新しい兄弟と御対面。


──ぴんぽーん


インターホンの軽やかな音が響いた、ちょっと緊張する。だって兄弟は男ばかりだそうなのだ、上手く遣っていけるかどうか不安しかない。

『はーい、どちらさまですか?』

スピーカーから飛び出したたどたどしい喋り方、変声期前の少年ボイス。私は確信した、上手く遣っていけると。


「あ、あの。今日から御世話になりますマリーという者ですが。」

『おねーちゃん!?まーくーんっ、おねーちゃん来たよー!!』

『はいはい、…っとすみません少々御待ちください。』


寧ろ少々御待ちください、私鼻血が出そうでしてよ。この昂りをどう静めれば宜しいんでして?生憎私所謂ショタコンという奴でして、特に小学三年生の男児なんてもう…と、ジュリに冷たい眼で見られてる。引き締まれ私のほっぺ。


「やあ、良く来てくれたね。」


やばかった、あと一秒でも早く開けられていたら私の破顔を御兄様に見られていた。家族になった初日から変人扱い確定だった、限りなくアウトに近いセーフだった。良かった。

そしてその御兄様はにこやかに私を出迎え、共同使用しているという五階へと案内してくれました。エレベーターを降り、リビングらしき部屋へと通され一番最初に飛び出したのは矢張ショタっ子。くそ、可愛い。


「いらっしゃいおねーちゃん!!…あれ、お帰りなさい?」

「こら弥、先ずは自己紹介をしなさい。──…私は次男の朝比奈 右京です、何か有れば相談してください。」


まるでショタもとい弥君に御手本を見せるかのようにまず自己紹介してくれたのはかっちりスーツにオールバックな御兄様。かしこまった雰囲気に何となく身を固くしてしまい、一先ず会釈。


「えっと、本日より御世話になります。マリーです。」

「ぼくね、朝比奈 弥!よろしくねおねーちゃん。」

「はい、二人とも良くできました。僕が長男の雅臣です、よろしくねマリーちゃん。」


ふわりと柔らかな微笑みを浮かべる雅臣御兄様も素敵に輝いていらっしゃるけど、私にとっては弥君が誰よりも輝いて見える。今すぐ抱き締めても良いですか駄目ですか犯罪ですか。と、とりあえず自重して弥君が座っているソファーの隣へと腰掛けた。


いざ、ショタと会話!と意気込んだのも束の間、目の前に金髪の御兄様が。装飾を見る限り御坊さん?いや、コスプレホスト?


「やあ、初めまして妹ちゃん」


笑っちゃダメだ、妹ちゃんの謎のイントネーションに笑うな私。私はおしとやかな大和撫子、笑うな。


「は、はい。宜しくお願いします。」

「うん、よろしくね。俺は要、お兄ちゃんって呼んでくれて良いよ。」


にこやかに手を差し出しながらそう言う要さんは恐らく変態の部類なんでしょうか、取り敢えず握手。と右手を差し出した私が馬鹿だった、手の甲へと口付けられたのだ。

いや、別に良いのよ手にちゅっちゅされるくらい。ただ驚くじゃない、照れるじゃない。思わず変な声出そうになったわ。


「やですわ、御兄様ったら。」


私は百合物に出てくるかのような女生徒風の口調を試した。いやたしかラジオで何回か使ったネタだけど良いじゃない、バレたって。家族ですもの。ついでに片手を頬へと当て軽く首を傾げて言ってみる。


「かな兄ばっかずるいー、俺も君とイチャイチャするー★」


然り気無く要さんの手を振りほどいたかと思えば第二の刺客。思い切り抱き着かれた。え、は?


「俺ね、椿ってゆーの。で、アニメとか映画とかの声当ててる所謂声優やってまーす。結構メジャーな作品にも出てたりするから、良かったら俺の声探してみてね★」


貴方のショタ声が好きですとはこのときの私には言えなかった。だってそんなの変態確実じゃないですか、ってちょっと人がどう対応して良いか分からず戸惑ってる間にすりすりするの止めてください、弥君にチェンジぃぃぃいい!!



その後、梓さんの制裁を喰らって事態は収拾した。










はろー、はろー
( 初めまして我が兄弟 )
( スキンシップは御遠慮ください )







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