そのあと結局、ユーリとの再開を惜しむ間もなく騎士をちぎっては投げちぎっては投げ……。さらにはフレンと勘違いして襲ってきたザギをぶっ倒し只今水道魔導器とフレン探しの真っ最中!
けちなみにハルルを目指して呪いの森を歩いてるところであります。
「んふふー、ユーリーユーリー」
「何だよ。」
「いやいや、見ない間に美人さんになったねー。目の保養目の保養。」
「マリーは見ない間におじさん臭くなったな。…いや、元からか」
「どういう意味さーっ!」
んふふ、とユーリの端正な顔を見上げていたら呆れた様な溜め息が降ってきたところで、エステルは不思議そうに大きな瞳をぱちぱちと瞬き、首を傾げて見せた
「お二人は、お知り合いなんですか?」
「んーと、所謂幼馴染みとか、そんな感じかな。」
「ただの腐れ縁だろ。」
「ちょっとユーリ、私に冷たいんじゃないのおいこら。」
むきーっ!と涼しい顔のユーリを睨み付けてやってもどこ服風、相変わらずのポーカーフェイスですことこんちくしょー。
歳の差5つ分を埋めるにはまだまだ色々足りてないものがあるらしい、むすっとした気持ちを落ち着かせる為にエステルにハグしながら森を進んでいると、突然私の腕から逃れ走り出すエステル。
「随分古い……魔導器?」
「ええ、そうみたいです。」
「へぇ、何でこんなとこにこんなモンが… 」
あんのかねぇ。おそらくそうユーリが言いかけた瞬間、小さな爆発が起こった。恐らくエアルによる極々小規模な爆発だが、間近で見ていたエステルは可愛らしい悲鳴と共に倒れてしまった。
私とユーリは顔を見合わせてエステルを少し開けた場所まで運び、パンダをベッド代わりに寝かせてみた。
ねぇちょっとユーリさんなに肩震わせて笑ってるんだわさ。
「なーに笑ってんの。」
「…くくっ、いや…お前の武装魔導器いつの間にそんなへんてこになったんだよ」
「可愛いでしょ、パンダちゃん。はい、ちゅーっ」
50cm程のパンダちゃんを召喚して、ユーリの唇に押し当てる。えへへー、奪っちゃったー。なんてゆるゆると頬緩めて笑ったら、ユーリそっぽ向いちゃった。
そう言えばユーリは猫耳萌えだったか…つまりパンダちゃんの魅力が伝わってないってことだね悲しいな。と手元のパンダちゃんを弄ってたら、不意にフードの上から頭を撫でられた。不思議に思ってユーリを見上げたら手の中のパンダちゃんを拐われた。
抗議の声をあげようとした私の唇を、柔らかいものが塞いだ。そう、パンダちゃんだ。
「んむっ!」
「はっはっはー、仕返し成功だな。」
「んー、ユーリと間接キスしちゃった。」
「なんなら、本当にするか?」
えへーっ、と笑えば馬鹿言うなと返されると思ってた。でこぴんくらい喰らう覚悟だってしてた。けどなんなんすかユーリさんその色気は。え?大人の色気?なにそれそんなもの出すとか卑怯極まりないですよああすんません生意気言ってすんませんその端正な顔を近づけないでくださいほんとごめんなさい。
ユーリの息が掛かるくらいまで近付かれて、私の顔は林檎すら真っ青に見えるほど赤いだろうと安易に想像出来た。だってほっぺ暑いもん。
これ以上ユーリの顔を見ていられなくて、きつく目を瞑った。
「……ったく、そんな顔してるとマジにしちまうぞ。」
風の音に紛れて、ユーリの声が聞こえた気がするけど正直それどころじゃない。私はユーリが何を言ったか聞こえなかったし、何より今問題なのはこの距離だ。しまいには腰に腕を回されて逃亡阻止されてしまい、駄目だ…奪われる…!
と、思っていたら唇の感触があったのは口ではなく鼻先だった。……まさかの鼻ちゅー?馬鹿にされてないか?されてますよね?
ぽかーん、とユーリを見上げていたらわしゃわしゃと頭を撫でられた。これは完璧に子供扱いされている。
「おら、そんなむくれんな。そろそろ姫さんが目ぇ覚ます頃だろ。」
言って、なにやら実を拾ってきた。食糧にでもするつもりだろうか、でもユーリが持ってるそれ、確か食用ではあるけど苦いって騎士団で教わったことあるような…
「……にがっ、」
ほら。
明日は愛をあげたい
(愛という名のパナシーアボトルを)
(君に捧げよう。)