今日も今日とて平和な城内。恐らく世界はこんなにも平和ではなく、むしろこの空間が異常なのだろう。すぐ近くの下町にすら目を向けないのだ、もっとずっと遠くの町や国のことなど気にしてすらいない連中が殆どなんだろう。
しかし、少なくとも今私の目の前には確実に平和が広がっている。なんてったって目の前のエステルが華やかな水色のドレスを着てくるりと回って見せてくれているからである。
「マリー、どうです?」
「うんうん、可愛いよエステル。んもうバッチリパーフェクト!」
「ふふ、照れちゃいます」
微かに頬を染めて照れてみせるエステル。ちくしょうほんと可愛いなぁ。その可愛さのひと欠片でも私に分けては貰えませんでしょうか、え?生まれもってのもの?そいつは失礼。しかし、そんな彼女の可愛らしい笑顔も一人の無粋な騎士によって崩されてしまう。
「失礼します、エステリーゼ様。」
とんとん、と規則通り二回ノックし、エステルの許可を得て入室したガタイの良い騎士は、とても良い辛そうに実は……と口を開いた。
まあ簡単に言うと、エステルがフレンに伝えたかったことがちゃんと伝わってなかったてこと。つまり伝達ミス?んにゃ、というかフレンの耳に入れるまでもないとでも思ったんだろう。
しかしながらうちのお姫様はそれで引き下がる程おしとやかではなかった。
「そんな…っ!それでは困ります!」
「いえ、しかし…」
「こうなったらフレンに直接言いに行きます!――…マリーっ」
「うん、フレンのとこだねー?」
おいでー、とお姫様をご案内しようとすると、騎士に道を塞がれた。
隙をついて部屋からは出たもののそこからは騎士との鬼ごっこ開始だ。これはこいつら巻くまでフレンのとこに行けそうにはない。取り敢えず、エステルの手を掴んで城内を駆け回った。
しかし、さすがに訓練を受けている屈強な騎士達。まんまと囲まれてしまいましたとさ。
さあ拍手の準備を
(登場したのは)
(下町の用心棒"ヒーロー")