*やまのなかにいる*

 どこだここ。
 一通り混乱し終わった後だけど、やっぱりその答えはわからない。とりあえず山を降りるためにてくてくしてるとこ。
 あ、説明がまだだったね。でもどこから説明しようかな……。とりあえず時系列順にいこっか。
 まず、今は放課後、下校時間だったの。白廉が本屋さんに行きたいって言ってて、で僕もついでに一緒にご飯食べるー!ってことで、学校がある山からてくてく降りてたの。
 まあ、山って言ってもやっぱり通学路だから、それなりに整備されてるんだよ。ぼこぼこしてるけどアスファルト敷いてあったり、街灯ついてたり。まあ下校時間には街灯ついてなくて、しかも雨上がりの曇りだったから薄暗かった。
 そう、雨降ってたの。ちょっと雨に関する白廉可愛いの話していい?あのね、白廉水がすっごい苦手で、夏に海行こう!って誘ったけど断固拒否されたりしてね。この前とか、一緒に歩いてて、小雨降ってきたの。あー降ってきたねーって白廉の方見たら、その僕が雨見てた一瞬の間に大きな傘と雨合羽を装着してて。どんだけ雨嫌いなのって話よ。可愛すぎない?
 いい加減本筋に戻るね。
 で、帰ろうとしたら雨降ってたから、白廉と一緒に雨あがるの待ってたの。その間にみんな帰っちゃって、2人っきりの下校!デートかな?
 下校しながら、水溜りの水を白廉にかけたりして遊んでたの。そしたら白廉、ビビりながらも、厚底ブーツで僕に水かけて返して来たりしたの。半年くらい前に比べて僕達すっごく仲良くなっててね、イタズラとかしても大丈夫な感じになってるんだよ超楽しい。
 そんで、目を開けたら整備も何も無い野山だったの。
 意味わかんないね。うん。僕たちも意味わかんない。
 そんな感じで一通り混乱して、で白廉提案の「とりあえず山を降りて人を探す」をやってるところ。
 で、僕既に疲れたんだけど。
 だってさぁ!!!白廉みたいな体力お化け(いやまあお化け退治する方だけど)はスイスイ山道歩けるだろうけどさぁ!!!僕普通の男の子!!!しかもなんなら見た目女の子!!!同じ速度で歩けるわけないし!!!ぷんすこ!!!
 僕がぷんすこしてるのにも気づかず、白廉がちょっと嬉しそうな顔で振り返った。可愛い。
「あぁ。やはり人は明かりがあると安心するものなのだな。おーい、なみ。あと少しだぞ。」
「白廉の少しは長いんだってぇー。」
 坂道の下の方からため息をついて見上げられる。
 あの顔。絶対しつれーなこと考えてる。
「なみが、体力無いとかじゃ、ないんだからね。白廉、が化物なだけ、なんだからね。」
「なんだいきなり。化物だとか失礼なやつだな」
「白廉だって、どうせなみの体力女子並とか、考えてたんでしょー。」
 何故わかった、という感じで目をそらされる。
「……まあいい。ほら、人が通る整備された道があるぞ。あそこを行けば歩きやすいだろう。頑張れ。」
「やだ。」
 もうこうなったらしゃがみ込んで駄々こねてやる。
「…駄々をこねるな。」
「いーやーだー。」
 てってーてきにこねこねしてやるんだからね!
「どーせなみは服だけじゃなくて体力も女の子ですからー。もう歩けませんー。」
「…拗ねるなよ。」
「ふーんだ。」
 白廉に困った顔させちゃってる。ちょっと申し訳ないなと思ったけど、でもやっぱりワガママ言いたいし、あでもあんまり困らせすぎるのも……。
「……わかった。おぶってやる。」
「ホント?!」
 やった!白廉の方が先折れてくれた!
「あぁ。どこかの女装男子曰く、俺は化物なみの体力らしいかr」
「ありがと白廉!」
 白廉におんぶしてもらえる!やった!
「山をおりたら下ろすからな。」
「うん!白廉大好き!」
「はいはい。転生して女になってから出直せ。」
 ……うん、もちろんそのつもりだよ。
 だから友達でいるくらいは許してよね。

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