「アイツなんてほっといて、俺といろよ……」(CV.お布団)

 (やっちゃった…………。)
 シャコシャコと歯ブラシを動かしながら落ち込む。濡れた髪が顔に張り付いて冷たいけど、それも気にならないくらい落ち込んでた。
 何を落ち込んでるかっていうとね、さっき白廉に言ったことが大失敗だったんだよ。
 前回さ、白廉の裸見たい派と僕が見られたくない派の戦争起こったじゃん。あのあと結局、こっちの体を見られたくない派が勝ったんだよ。でも僕も一緒にお風呂に入らないってう理由がなかなか思いつかなくて、白廉も首傾げてきいてくる(可愛い)し、焦ってテンパって言った理由が、
「な、なみ、今日から生理なの!!!!」
(やっちゃったあああああああああーーーーーー!!!!!!!)
 シャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコと高速歯磨きで恥ずかしさを紛らわそうとする。でもなかなか頭から離れてくれない。白廉の反応も「あ、おう…体を冷やすなよ…」みたいな微妙なやつだったし。もう湯船に沈んじゃいたかったよね!部屋風呂はシャワーだけのやつだったから無理だったけどね!ってか、ヒキながらも体の心配してくれる白廉マジ優しい好き。
 シャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコシャコしてるところに、ちょうど白廉が帰ってきた。
 ちなみに風呂上がりの、っていうか風呂入る時の白廉は両手首に包帯巻いてる。初日にビックリしてなんでか聞いたら、「ああ、怪我などではないから、気にするな。」って言われちゃって、それから詳しく聞いてない。確かにいつも手首まで隠しちゃう手袋し、てるよね白廉。隠したいものでもあるのかな。秘密主義だね!ミステリアスだね!!
 白廉帰ってきて嬉しいけど、さっきあんなハズカシイこと言っちゃったから、気まずくってちょっと目を逸らしてた。そしたら白廉がちょっと迷って、荷物を置いてからベッドに腰掛けてる僕の後ろに乗ってきた。
「喉に歯ブラシを刺さないように気をつけろよ。」
「??」
 なんだろ?と思ってシャコシャコの手を止めてたら、目の前をなにかで覆われた。
「??!?!!!?!!?!」
 テンパってたら、髪の毛がぐしゃぐしゃって掻き回された。
 えっ、これって、これってさ、
「全く……こんなに濡れた髪だと、俺より先にお前の方が風邪引くだろうが。」
(髪を拭いてもらうイベント発生??!!!!!)
 ただただ嬉しさで固まってたけど、もしかしたら白廉も僕と同じように気まずさを感じてて、それを解消するために髪を拭き始めたのかな、とか思った。

 ひとしきり幸せな時間を過ごした後、白廉の体調のこともあるので早めに寝ることにした。白廉には他の子のとこ行ってもいいぞって言われたけど、正直白廉といられるなら他の子とかどうでもいいし、僕も一緒に早寝することにした。
 おやすみーと言って、部屋を真っ暗にする。白廉も僕も、寝るときは真っ暗にするタイプたったんだ。共通点嬉しい。白廉はすぐ布団で目を閉じて、僕はちょっとだけスマホ弄ってから寝た。

 そして、それが動き出したのは4時間後。草木も眠るはずの丑三つ時に、僕は枕の下のスマホからの振動で起きた。
 寝る前にスマホ弄ってたのはこの為。枕の下でスマホがブルブルしてもあんまり音が出ないっていうのは、白廉がお風呂行ってる間に確認済み。 
 起きたのはいいけど、なかなか頭が覚醒しない。やらなきゃいけないことがあるのはわかってるのに枕と頭が離れてくれない。枕の下のスマホはなんとか止めたけど、このままだと二度寝しちゃう……。
 そんなこんなでグズグズしてたら、部屋のドアがカチャッと開く音がした。誰かが入ってくる足音がする。
 白廉かな、と思ったら、人影から小さなしゃべり声がした。声は白廉のものじゃなかった。そして、少なくとも一人じゃない。
 寝たいと主張する瞼を全力で説得してこじ開けると、まず寝てる白廉が見えた。ということは、入ってくる人達は白廉じゃない。
 じゃあ、入ってくる人達は誰?
 そうやって考えてるうちに、白廉と僕の間をなにかに遮られた。さっき入ってきた人達だ。
 こっそり目だけを動かして周りを見ると、数人で白廉のベッドの周りを囲ってる。
 誰かが白廉の顔に手を近づけるのが見えた。
 手になにか持ってる!
 白廉危ない!!!


- ナノ -