まあ冷静に見ると見た目は並だよねうん

「でね、かくかくしかじか同室リンチでよばいばいなのおけい?」
「わからん」
 すぱーん、と跳ね返されちゃった。
「いやいや、沢本お前その説明でわかるわけねーだろ」
「いやあ白廉ならわかってくれるかなぁなんて」
「…俺は読心ができるわけではないぞ」
 そんなわけで、説明がへたっぴな僕の代わりに先生が話してくれてる、職員室なう。
 先生の前に僕が座って、その僕の隣に白廉。つまり僕のすぐ近くに白廉がいるわけなんだけど、背筋いいし、なんかいい匂いするし、座っても僕より小さいし、地面に足届いてないし、えっと何が言いたいかっていうと白廉可愛い。白廉を好きになった理由はかっこいいからなんだけど、こうやって近くにいると可愛いところも見えてきて、すごく嬉しいし楽しい。
「…なるほど、私を犠牲に他の者を守るということですか」
「う、まあそうなんだが、お前もオブラートってものをだな…」
「なんですかそれ」
 そんなフィルターのかかった白廉観察をしてる間に、話が終わったっぽい。
「つーわけでさーねーびゃーくれーん部屋一緒になろー?」
 机の上にだれーっとして、白廉を見上げておねだりしてみる。ほら、白廉小さいから見上げられるのに弱いと思うんだ。そんなこと考えてる僕をチラッと見て、白廉は困ったように頭を掻いてた。これは効いたのかなどうなのかな。
「まあ…そうだな。確かに俺ならば被害は最小限に抑えられるだろう」
「え、じゃあ一緒にいてくれるの?!」
「八江には申し訳ないんだが、そうしてくれると先生も楽なんだよな」
 楽っつちゃったよセンセ。
 白廉はそんな僕らを見比べて、ため息をついた。
「……そこまで言われて、断れるわけがないでしょう…」
 っっっしゃああああ!!!白廉と!同室決定!!いやっほぉい!!!
 テンション上がりまくる僕に笑いながら、先生が白廉にお礼を言ってる。
「すまんなあ八江。多分もう明日から風当たりが強くなると思っけど」
「ああ、風当たりなら既に暴風警報ですから、大丈夫です」
 それは大丈夫って言わないよ!
「え?もうリンチとかあったのか?」
「はい。あ、ご心配なく。奴らは全員無傷です」
「いや、お前は?」
 先生の当然な疑問に白廉は、なにいってんだこいつ、ってな感じで首を傾げた。
「これで傷を受けるような程度の者に、先生は身代わりを頼もうとされたのですか?」
 ………んんんんだからなんでそんな堂々としてるのかっこいい!!!
 そのままの勢いで机をバァン!と叩きそうになって全力で抑えた。でもニヤニヤが抑えられないよ!
「…あ、ああならいいや。ところで俺、沢本から聞いた話してだけで判断しちまったけど、お前なんか武道やってたのか?」
 先生も、あんまり平然としてる白廉にたじたじっぽい。
「…あー、まあ、小・中と面倒を見てくれた叔父がそういうことの達人だそうで、少し手ほどきを」
 白廉は、上着を着ながら片手間に答えた。
「んーっと、叔父さんってもしかして、小学校ん時参観日とかに来てたあの眼鏡のイケメン?」
「ああ、多分それだ。よく覚えていたな」
「まあね。なんか白廉と似てないなーって印象がさ」
 っていうのは半分嘘で、本当は白廉のこといっぱい知りたくて当時からよくよく観察してたのさ。でも、白廉と似てないなってのはホント。だってそのイケメン、そもそも髪黒かったんだもん。
 先生が、そういや、と椅子とか諸々片付けながら言った。
「確か手続きの時に来てたな。女性陣がキャーキャー煩かったぜ」
 イケメンでしかも強いとか反則だろ…って先生がブツブツ言いながら引っ込んでった。
 まあでも僕は、見た目は並でも中身とかがイケメンで可愛い白廉の方が好きだけどね!
 謎の優越感に浸りながら、大急ぎで荷物まとめて先に職員室出ようとする白廉を追いかけた。


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