怪盗ハーチェスの予告状

 おはよーございます。すっかり雪も積もっちゃった寒い冬の朝。真っ白な雪の明るさが眩しくて目が覚める。
 夜明けからしばらく経ったくらいの時に、なみとがっすんがなみの部屋にいると、そこに白廉が来た。
「あ白廉おはよー。」
 なみが挨拶したのに、白廉は障子をあけたところで固まって、なんか渋い顔してる。
「どしたの?あ、がっすんのこと?」
 確かに、こんな時間にがっすんがなみの部屋にいるのはちょっといつもと違うよね。実際、今朝はいつもと事情が違った。
「お帰り、白廉。丁度いい所に来たな。これを見てくれ。」
 がっすんに招かれて、白廉はやっと部屋に入ってきた。
 がっすんの指さした先は、白廉がさっき開けた障子と対になる方。そこには、
「……矢文ですか?!」
 手紙が括りつけられた矢が刺さっていた。
「そうなんだよ!なみがさ、ここいたらさ、ピュンって!」
 なみが身振り手振りでぴょこぴょこしながら教えると、落ち着け、とがっすんに頭を押さえつけられた。
「やーんせっかくセットしたのにー。」
「矢は、どこから撃たれたかわかるか?」
 白廉は矢をいろんな角度で調べながらきいた。
「わっかんない!」
 なみそんなに動体視力良くないし。
「でも撃てるとすると、窓からかなって思うんだけど。」
「まあ、そうだな。」
 なみの推測に、白廉も同意した。
「矢の角度は確かに窓の方を向いている。それから、刺さり方も浅い。遠くからか力がないのかは判断できないが……。」
「なるほどなぁ。窓の外から撃ったとなれば、具体的にどこだい?」
 がっすんの疑問に、みんなで窓の外を見た。
「この部屋の窓の外っていったら、中庭かな?」
「そのようだな。あの木の上とか良さそうではないか、白廉?」
 がっすんと二人して、一番目がいい白廉を振り向いて答えを待った。
 白廉はそれには答えず、矢の周りをなんか色々調べて、黙っちゃった。
「まあ、なにはともあれ、文を読んでみようか。」
 白廉どうしたんだろ?となみが考えてる間に、あんまり気にしない様子のがっすんが言った。
 まいっか。元気ない時って大体寝不足だったりするからね。
「文を読むのは賛成ですが、できるだけ矢を動かさないようにしていただけますか。まだ調べたいことがありますし、なにかの証拠になるかもしれませぬゆえ。」
 がっすんの提案に答えて、白廉が言った。
「ああ、構わないが…では誰か外してくれぬか?私は…その、不器用でな……。」
「がっすん不器用なんですー?プーくすくす。」
「べ、別にいいだろう。」
「兄上が不器用なのはずっと前からですよね。私が外しますよ。」
 そう言って白廉は前に出た。がっすんは白廉にまで不器用言われたのに落ち込みつつも、白廉にいじられたことにちょっと嬉しそう。
 そんなお兄ちゃんをガン無視で、白廉が慎重にしんちょーに手紙を外した。
 手紙を先に見た白廉は、そのまま固まっちゃった。
「なになに?何書いてんの?ラブレターだとちょっと困るんだけど。」
「躊躇いなく断る気か小娘。白廉、私達にも見せておくれ。」
 のぞき見ようとするなみ達に、白廉はゆっくりとした動作で、手紙を渡した。その手紙の内容を見て、白廉が固まった理由を理解した。

[今宵、皇弟殿下とそのご友人を盗みに参ります。
    第13代目 怪盗ハーチェス]



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