サイレントマナーモードにしているケータイがキラキラと光った。この光り方は青峰君からの電話だ。

「もしもし、」
「なあ、テツ」
「なんですか?青峰君」
「明日って暇か?」
「えっと、明日ですか?はい、空いてますよ」
「なら、ちと遊ばねぇか」
「私、バスケ強くないですけど、いいですか?」
「バスケじゃなくて、フツーに遊びに行こうぜって誘ってるんだけど」
「青峰君がバスケ以外の遊び方を知っているとは驚きですね」
「あー・・・、さつきから水族館のチケット貰ったんだよ」
「水族館ですか。いいですね」
「じゃあ、明日の10時にお前ん家に迎えに行くから」
「はい、待ってます」

1分32秒の通話だったが、青峰君との遊ぶ約束とはとても嬉しいことだった。
テツナはカレンダーに花まる印を付けて、10時と書いた。
どうしよう、何を来て行こうか。桃井さんに質問しようかな。
テツナは新規メールを出すと、「遊びに行くのに、どんな洋服を着ていけばいいですか?」と書いて送った。
すると、すぐに「もしかして、大ちゃんとのデート?テツナちゃんは春らしい薄いピンクのワンピースとか似合うんじゃない(’・ω・’)」と返ってきた。
「デート、なんて大げさです!一緒に遊びに行くだけで・・・。」と返信すると、ピンクのワンピースを思い描いた。
ピンクのワンピースかぁ・・・。持ってるけれど、桃井さんみたいに似合うかなぁ。いそいそと洋服を出してきて、鏡の前で合わせてみる。
確かに、春っぽくていい感じ。じゃあ、カバンはこれかなぁ。
気がつくと12時を回っていて、急いで寝ないと明日遅刻してしまうと思い、ベッドに潜り込んだ。

次の日はそわそわとしながら、10時を待った。
10時を10分ぐらいすぎたところで、インターホンが鳴った。
ぱたぱたとスリッパを鳴らせて、玄関の扉を開くと、「よう、」と青峰君が立っていた。

「おはようございます、青峰君」
「ピンクのワンピースか、似合ってるぜ」

さすが、桃井さんのセレクト!褒めてくれて純粋に嬉しかった。

「ありがとうございます。青峰君もかっこいいですよ」

青峰君は照れくさそうに頭を掻きながら、「んじゃ、行くか」と言った。

さりげなく青峰君が手を出してきたので、それに手を絡めると出発した。
テツナの家から一番近い駅まで歩いて行くと、そのまま電車に乗った。

「電車、結構混んでますね」
「まあ、休日だしな」
「そういえば、三度の飯よりバスケが好きな青峰君がどうして、水族館のチケットなんかもらったんですか?」
「・・・特に理由はねぇよ」
「もしかして、ザリガニを取りに行く気分ですか?」
「海にザリガニはいねぇだろ」
「ああ、そういうことは知ってるんですね」
「なんだよ、馬鹿にしてんのか」
「いや、青峰君がバスケ以外で遊ぶなんて、頭のねじがどこかに飛んでしまったのかと思って」
「そんなことねぇよ」

そうこう言っているうちに、目的の駅についた。ホームに人が流れ込む。その中で、青峰はテツナの手を離さないようにぎゅうっと握ってホームから出た。
駅前の水族館は親子連れが多くいた。
入り口入ってすぐの海の生き物体験コーナーでは、子供たちに混じって、青峰が何かを触っていた。

「なあ、テツ。これザリガニみてえ」

ほら、と後ろで見ていた私に青峰君は薄茶色のザリガニみたいなのを見せてきた。

「よくつかめましたね。それは、テナガエビの仲間らしいですよ」
「テツ、この黒いやつ、ぷにぷにしてて、なんかハマる」
「青峰君、ナマコにそんな攻撃しちゃだめですよ。優しくさわってねって書いてあるじゃないですか」
「別に握り潰してるわけじゃねぇんだからいいだろ」

そんなこんなで、子供たちの中でめちゃくちゃ目立ちながらも思う存分遊んだあと、ゆっくりと水族館を眺めて回った。

「テツ、こっち来てみ」
「なんですか?」
「クリオネがいる。ほら、ここに」
「かわいいですね。なんか、妖精みたいです」
「知ってるか?クリオネの食事のシーンってエグいんだぜ。バッカルコーンっていうあごみたいなのを出して、バリバリ食うんだぜ。驚くだろ?」
「私はそういう生き物の知識だけは詳しい青峰君に驚きです」

そんなことをいいながら、深海コーナーに突入した。
何となく肌寒い感じで、照明も暗かった。

「この魚、目がねぇ」
「こっちは光ってますよ」

小さな水槽に二人で顔を近づけて話していたら、青峰君が私の頬にキスをした。

「な、何するんですか?!」
「そんなに、そんな光るだけの魚見つめるなよ。そんな時間あるなら俺を見ろって」
「だって、青峰君を見てたって、光らないじゃないですか」
「じゃあ、今日から俺は光る」
「生物学的に無茶なことはやめてくださいね」
「なあ、もう出口っぽいんだけど、このあとどうする?」
「私は特に用事がないんで、青峰君に合わせますよ」
「俺はな、行きてぇとこあんだけど」
「じゃあ、行きますか」
「でも、そこ行ったら、多分お前は引く気がする」
「なんですか、そんなに変なところに連れて行くつもりですか?」
「あー、変じゃねぇけど、お前は自ら行こうとはしないところだな」
「私が行かないところですか・・・?スポーツジムとか?」
「全然ちげぇ」
「ボクシングの試合会場とかですか?」
「全然ちげぇ」
「わかんないですよ。正解はなんですか」
「ラで始まって、ルで終わる場所」
「・・・ライブサイト?違いますね、ルで終わるものなんですよね。分かりません」
お手上げですと、両手を上げると、青峰君はその手に自分の手を絡ませて、私の唇にキスをした。ゆっくりと唇が離れていくと、青峰君はペロリと自分の唇を舐めた。

「んじゃ、これから行くけど、(エロい場所だからって)引くなよ」
「・・・わかりました」

青峰は思った。エロい場所だって教えるのをどうしたらいいんだよ、教えてえろい人!


愛してダーリンVer.青黒 前編 





20130324
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