テレビを見ながら手に持っていたマグカップを目の前の机に置く。
「つまんないね」
「んー、この時期はね」
私がそう言うと、彼は眉を寄せて笑った。夜ご飯を食べ終わってから、温かいお茶を飲みつつテレビを眺めていたけど、新年明けてすぐは特番ばっかりで自分の好みの番組はない。
「ひまー」
私が彼の膝に頭を乗せると、くすくすと笑って頭を撫でてくれた。ふわりと暖かい感触に目を細める。
「珍しいね、なまえが甘えるなんて」
「お正月だから特別」
「へえ?今年からじゃなくて?」
彼は嬉しそうに私の髪の毛を弄ぶ。違いますー、と口を尖らせば彼も私の真似をしながら「なーんだ残念」と呟いた。全然残念そうには見えないけど。
「いたっ」
「ん?ごめん!」
彼が前髪に手をかけた瞬間、ちりっとした痛みがして思わず声をあげた。不安そうに眉をひそめている彼に申し訳なくなって、にこりと笑顔を見せる。
「ニキビできちゃったんだ」
すりすりと額をさすって笑えば彼は安堵したのか笑顔を見せてくれた。
「あぁ、それ想いニキビじゃないの?」
「想いニキビ?」
「んっ、確かおでこは想いニキビ!」
彼は自分の額を指差して自信満々にそう言うと、私の髪の毛を弄ぶのを再開した。
「そっかあー、なまえはそんなにオレのことを…」
彼はニヤニヤしながらうんうん、とわざとらしく頷いている。私はその頬にすっと手を伸ばした。
「まあ、当たり前でしょ?」
「…へ?」
「そうじゃなきゃ正月からアホ健人と一緒になんかいないし」
私の言葉に、彼の一瞬動きが止まったかと思うと、みるみるうちに真っ赤になった。触れている頬からも彼の体温が伝わって来る。
「どうしたの?」
「あ、いや、なまえがそんなこと言うと思わなくて、」
予想以上に慌てるから、思わず吹き出してしまった。さっきまであんなに調子づいてたくせに。
「こういうの慣れてるのかと思った」
「いや、オレが言う分にはいいんだけどさ…」
「あははっ、ふーん、意外だ!」
自分の頭をくしゃりと掻きあげて苦笑する彼に笑いが堪えられなかった。
「ふふ、照れる健人も好きだよー」
にやにやしながらからかうと、今日のなまえはいじわるだと言われた。
反動ロマンスいつもとキャラが逆転しているような…まあそんな日があってもいっか。
(2012.01.06)
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