「さむー」


無意識に左手をポケットに突っ込む。はあっと息を吐くと白い息。


「降りそうだね」
「おー」
「家着くまで降んなきゃいいけど」


雲がかかった空を見上げて呟く。左手はポケットの中でカイロを掴んで、右手は冷くても彼の手を掴んだまま。


「そろそろかあー」


携帯のディスプレイに表示されているのは、23:58。今年が終わるのもあとちょっと。


「なんか、早いな」
「何が?」
「1年」


うん、と答えて鼻を啜る。繋がれた彼の手に、少しだけ力が入った。


「今日ここにお前といられてよかったわ」
「ん、」
「ガラじゃねーけど」
「だね」


くすくすと笑うと、うっせ、と返って来る。相変わらず素直じゃないなあと思う。私もだけど。
去年はまだ私が高校生で、一緒に来ることは出来なかったから。外でこうやって手を繋ぐことだって出来なくて、もどかしい思いばっかりしたから。


「ほんと、1年って早い」


彼に聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟く。ちらりと彼を見ると、目線が重なった。それと同時に、ごん、と鐘の音が響く。


「あ、明けたね」
「そうだな」
「…あけましておめでとう」
「おう」


笑いながら私に答える彼を見たら、ちょっと感傷に浸った自分が恥ずかしくなった。


ねがいごと


「は、初詣!早く行こう!」
「はいはい」

((今年も一緒に年越しできますように))



(2012.01.01)
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