「おいなまえ、これ片付けとけ」
「あ、はーい」


先生に部活で使う道具が入ったカゴを渡される。
それを持って部室に行くと、ほとんどの部員が帰り支度をしていた。


「じゃーなー」
「うん、お疲れさま!」


ぞろぞろと部員たちが帰りだす。龍だけは手伝おうかと声をかけてくれたけれど、マネージャーの仕事だから、そう断った。


「バカじゃねーの?手伝わせりゃいーのによ」


龍が部室から出ていくのと入れ替えに入ってきた先生が言った。


「明日試合でしょ?みんなには今日はゆっくり休んでもらわないと!」
「そんなのお前も同じだろ」
「でも私はマネージャーだから」


私がそう言い返せば、先生は変わんねえの、と私の頭をくしゃりと撫でた。


「いいから早く片付けてなまえも帰れよ」
「えー…せっかく2人になれたんだしまだ帰りたくない」
「なっ、バカかお前はっ!」


先生は慌てながら備品を片付け出す。くすくすと笑いながら私も片付けると、先生も手伝ってくれたからかすぐに終わってしまった。


「これで最後?」
「おう」


時計を見るとさすがに帰らないとまずい時間。はあ、とため息をついて部室のドアに手をかける。


「あ」


半分ほど開けたところで、先生に後ろからドアを閉められた。


「せっかくの2人きりなんじゃねえの?」
「そう、だけど」


腕を組みながらニヤリと笑う先生にドキドキして、自分の鼓動が伝わるんじゃないかと思った。3秒くらい見つめ合うと、先生は私の背にあるドアに手をついた。そのまま顔が近づいて、いつもより少しだけ深いキス。



「今日はこれで勘弁してやるけど、次は覚悟しとけ」


ハートビート


至近距離で囁かれて、ここが部室じゃなければ、なんて思ったのは内緒。




(2010.06.13)
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