――カチリ
時計の針が12のところで揃った。
今日は彼の誕生日。
『お誕生日おめでとう』のメールを送信すると、少ししてから返信があった。
『こっそり外出てこられる?』
幸い今日は両親共に泊まりの用があるらしく、今家には1人しかいない。静かに玄関の扉を開けると、門に寄り掛かっている彼がいた。
「翔太…なんでここに?」
「夜遅くにごめん。でも、どうしても会いたくて」
眉を寄せながら軽く頭を下げて謝る彼を、私は家の中に招き入れることにした。私の言葉を聞いて驚いたのか、目を見開くと彼は優しく微笑んだ。
「はい、どうぞ」
テーブルに温かい紅茶の入ったマグカップを置く。彼はありがとう、と言ってそれを手に取った。私も自分のマグカップを持って彼の隣に座る。
「こんな時間に来てよかった?」
「今日は親いないから平気」
「…そっかー」
紅茶を飲む、一瞬の沈黙。
「誕生日おめでとう」
「あ!うん、ありがとう!」
彼は慌ててマグカップから口を離してお礼を言った。
「翔太こそこんな時間に平気なの?」
「今日は龍んちに泊まることになっててさ、今も龍のとこから抜け出して来てんの」
話す彼を見つめていると、目が合ってふわりと微笑まれる。
「でも誕生日最初はなまえに会いたくてさ」
「あ、ありがと…」
「うわ、俺…自分で言ったけど恥ずかしー」
髪の毛をぐしゃぐしゃと掻いて照れる彼が可笑しくて、ケラケラと笑うと、笑うな!と怒られてしまった。
「あのね、これ。学校で渡そうと思ってたんだけど」
彼に差し出したそれはもちろん誕生日プレゼントで。
「開けていい?」
「どうぞ」
「うわ、かっこいいじゃん!」
箱から取り出して目をキラキラさせる彼に口元が緩んだ。
「ありがとう、大事にするから」
「ん」
頭をくしゃりと撫でられ、心地よくて目を瞑る。彼の手が止まってゆっくりと目を開くと至近距離で目が合った。私からちゅ、と軽いキスを送ると彼は目を細めて笑った。
もう1つのpresent「来年も私が最初に祝うからね」
「…おー、よろしく」
(2010.05.15)
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2010 風早誕生日記念
HAPPY BIRTHDAY!
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