「お疲れ様でしたー!」
「お疲れー」


部活が終わってゾロゾロと後輩たちが教室から出ていく。いつの間にか教室に残っているのは私だけになっていた。


「なんだ?なまえひとりじゃねーか」
「ん?」


声のした方を振り向くと教室の扉に腕を組んでよっ掛かっている彼がいた。


「先生!」
「…部活、終わったのか?」
「うん」


教室の後片付けなどを全て終わらせて彼のもとに歩み寄る。


「先生は?何してるの?」
「見回り。もう校舎ん中お前しかいねーぞ」


彼はダルそうにそう言って私から目を逸らした。


「…もう遅いから送ってく」
「へ?」
「ここで待ってろ」


それだけ言うと先生は教室を出て行った。


「……びっくりした…」


普段ではなかなか聞けない台詞だから、少しだけドキリとした。





「行くか」
「うん」


すぐに帰ってきた先生は私の手から鞄を奪い取って言った。


「いいの?まだここ学校だけど」
「まぁ…大丈夫だろ」
「そう?じゃあいいや!」


片手を差し出す彼の手を握り返した。少しごつごつした手に安心する。


「今日一市の家行きたい」
「ダメだ、親に遅くなるって言ってねーだろ」


そう言われて落胆する私に、彼は眉を寄せて笑った。


「今週の日曜来いよ。俺も部活ねえから」


彼に子供をなだめるように頭を撫でられる。私が頷くと彼は声をあげて笑った。



「ん、」


私はいつもの場所で立ち止まる。ここを曲がれば私の家の通り。送ってもらうときはいつもここで立ち止まる。


「今日はありがと」
「おう」


彼の胸に顔を埋めると、彼は私の髪の毛をさらりと梳いた。



「…また明日ね」


私は彼から離れながら言った。そして背を向けて家に向かって歩き出す。


家の前でふと振り返ると、彼はまだそこから私を見ていて。私は荷物を放り出し、走って彼のもとに駆け寄ると彼の顔を引き寄せてキスをした。


mellow KISS


「あの…おやすみ、言ってなかったから」
「おう、いい夢見ろよ」



(2010.04.27)
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