「せんせーっ!」
「うわっ、危ねーな」
彼の部屋のドアを開けていきなり飛びついてみると、彼は優しく抱き留めてくれた。
「会いたかったー!」
「毎日会ってんじゃねーか」
「2人だけじゃないもん」
彼の胸に頬を寄せるとふわりと頭を撫でられる。
「学校じゃあんまり話できないし」
「あー、まーそうだな」
「でも…あとちょっとだから」
彼は眉を寄せて笑った。あと半年で私も卒業して、ようやく自由になれる。
「卒業かあ…」
卒業すればコソコソ付き合う必要なんてないだろうけれど、やっぱり彼を先生として見られなくなるのは悲しい。私は部屋に入って先生の隣に腰を下ろした。
「先生…」
「あ?」
「私が卒業しちゃったら毎日は会えないよね?」
体育座りに顔を埋めながら問い掛ける。
「そりゃあ学校で会えない分減るだろうな」
こんなことをさらりと言ってのけてしまう彼を見ると、依存しているのは私だけなのかもしれない。
「なまえ、おまえそんなこと考えてたのか?」
「…うるさいなぁ、いいでしょ」
彼はニヤリと笑って私の顔を覗き込んだ。
「じゃあずっとここにいろよ」
「は?」
「ここでメシとか作ってればいいだろ」
彼は自分が無意識に言った言葉の意味に気づいたのか、顔を真っ赤に染めた。
「え…それってプロポーズ?」
「ばっ、ちげーよ!そういう意味じゃ…」
少女とfiancee「え、ちがうの?」
「いや…違くはねー、けど…」
彼は手の甲で口元を隠しながら満面の笑みの私をチラりと見た。
(2010.04.18)
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