いつもたくさんの女の子と喋っている彼を見ると胸が痛くなる。彼と話すことはあるけれど、いつも彼の回りにいる女の子のように積極的になんてなれないから。


「告白しちゃおうかなー、なんてね」


自分自身で呟いた言葉に苦笑して、手に持っていたジュースを口に含む。私は窓際の席で、校庭に目線をやると昼休みだからサッカーなどで遊んでいる生徒が目についた。


「で、誰に告白すんの?あの爽やかくん?」


校庭から目線を戻すと私の前の席に後ろ向きで座っている彼がいた。指は校庭で遊んでいる風早を指して。


「なまえが告白するなら協力してあげるよ?」

「いや、遠慮しとくよ。それに、風早じゃないしね」


眉を寄せて笑えば彼は何で?と言わんばかりの顔をした。


「多分、健人に言ってもどうにもなんないから」


私はジュースの紙パックを潰しながら言った。カタン、と椅子から立ち上がって彼から離れる。


向かった先はあまり使われていない階段。1人なりたい時に、よく来る場所。


「はは…ばかだ、私」


今こそチャンスだったのに。言っちゃえばすっきりしたかもしれないのに。まあ、言ったからと言ってハッピーエンドで終わるわけじゃないけれど。


「ふぅ、」


息を吐くとちょうど予鈴が鳴った。戻らなきゃ、重い腰を上げて階段を下りると下の踊り場に人がいた。


「健人…なんでここにいるの?」


私がここに来ている間に他の人が来たことは今までに一度もなかった。


「なまえ追いかけて来ちゃった」


そう言って彼は私に笑顔を向ける。


「…そ、そう」


今日の私はかなり可愛くない。早くここから消えていなくなりたかった。止めていた足を、また一歩踏み出す。


「あ、待って!」


彼に背中を向けた私の手が掴まれる。


「オレと付き合って!」
「え?」


その言葉に驚いて私は振り返った。彼は少し目線を下げているから目は合わせられない。


「どういう意味?」
「そのままだって!オレと付き合ってくださいっ」


今度は目線も合わせて、満面の笑みで。


「さっきさ、オレじゃどうにもなんない、って言ったじゃん」
「あぁ、あれは…」
「あれってオレが好きって意味でしょ?」


彼の言っている意味がよくわからなかった。あれは嫌味に近いものだったのに。


「…ぷっ、あははは!」
「え、何か違った?」


私が吹き出したことに彼は目を丸くして驚く。


「いや…間違ってはない、です」


全く…あの言葉で勘違いするこの人は、実は恋愛に向いてないんじゃないかと思う。


「私、健人が好き。付き合ってください」
「ん?うん」



バニラ日和


「あれ、オレからお願いしたはずなんだけどなー」



(2010.04.08)
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