「せん…か、一市」
先生、と呼ぼうとして彼と目があってしまった。告白をしてから1ヶ月が経ったけれど、これがなかなか慣れないもので…やっと敬語に慣れてきたくらい。
「無理だあ!やっぱり先生がいい」
「ダメだな。先生じゃ他の奴らと変わらん!」
「えー、みんな先生のことピンって呼んでるじゃん」
何度そう言っても、彼曰くダメなもんはダメらしい。…まあ、本当は名前の呼び捨てが恥ずかしくてしょうがないだけなんだけど。それをサラッとやり遂げてしまう彼を見るとなんだか悔しくなった。
「一市」
「はっ、やっと言ったな」
「一市!」
言ったノリで彼の隣に移動して腰に腕を回してみる。
「お、おい!」
「この前、家でならいくらでもしてくれるって言ったじゃん」
「言ったなあ、確かに」
じゃあいいじゃん、と抱きしめる腕に力を込める。彼の胸に顔を寄せるとじんわりと汗の匂いがした。
「なあ、なまえ」
「なーに?」
「ちょっとこっち向け」
顎を掴まれてぐい、と持ち上げられる。至近距離でじっと見つめられるとさすがに恥ずかしい。
「何…?」
「んー、何でもねえ」
私が問い掛けるとすっと目を逸らす。うわ…キスされるかと思った。いや、して欲しかったのかもしれない。
「何考えてるの?」
「なにも」
「嘘だ、目が本気だもん」
彼の顔を見ればそれくらいは分かる。
「…俺、矢野と吉田からお前が卒業するまで手出すなって言われてんだよ」
「はぁ?」
「どこからが手を出す、なのかがわかんねえ」
彼が自分の顎に手を当てて考える姿は少しだけ色っぽかった。
「それ、普通私に聞く?」
笑いながら彼と目を合わせる。
「キスまでならアリ、かな」
「へえ、そうかよ」
そう言うと、すぐにちゅっと唇を奪われた。
intolerable story「やべえ、俺卒業まで手出さない自信ねえわ」
彼がそう呟いたのを聞いてそれもいいかも、なんてね。
(2010.04.07)
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リクしてくださったあいらさんに。
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