「あっ、いた!健人…」
「ん?あーなまえじゃん」
「あ、みょうじさん」


私が彼を探しに行ったら彼は風早くんに詰め寄っていた。


「…何してるの?」
「いや、何って」
「また余計なことしてるの?」
「は、」


私は彼の手を掴んで座っている椅子から立たせて、風早くんに向き直る。


「ごめんね、風早くん…こいつの話は気にしないで?」
「いや…う、うん」
「ほら、行くよ健人!」


ぐいっと腕を引っ張るとまだ気掛かりがあるような表情でついて来る。



「あんまり人の恋愛事情には首突っ込まないの!」


もといた場所から少し離れたところで私は彼に振り返った。


「オレは博あ…」
「博愛主義はいいから!」


必死に弁解しようとする彼を見てると、耐え切れなくなって、吹き出してしまった。


「うーん、いつも思うけど博愛主義って彼女にとっては嫌な言葉だからね」
「ん?」
「彼氏にみんなを愛します!って宣言されてるんだからさ」


笑いながら彼に顔を向けたら、彼は思ったより真剣な顔をしている。


「…け、健人?」
「オレ間違ってた、かな」
「え…どうしたの?」


真剣な瞳で見つめられると少し怯んでしまう。さっきの言葉に深い意味はなくてちょっとからかってやろう、くらいの気持ちだったのに。


「けん…」
「オレさ、博愛主義なら嫌われることもないし1番いいと思ってたんだけど」


彼は間違ってたかな、と自分の髪の毛をぐしゃっと掻いた。


「オレ、なまえも好きだからさ」
「うん」
「いや…なまえが好き」


真っ赤になった顔を手で隠していつもの彼らしくない。


「ねえ健人。私は博愛主義嫌いじゃないよ?」
「だってさっき…」
「私をそこらへんの彼女と一緒にしないでよね!」


彼の頬に手を当てて微笑む。


「健人の彼女なんて器が大きくなきゃ出来ないんだから」
「なまえ…」
「私は健人が浮気する気がないのは分かってるから」


彼の頬をぺちんと軽く叩くと彼は力無く笑った。


「今日どうしたの?なんか変!らしくない!」


私がそう言うと、急に腰に手を回されて鼻が彼の肩に当たった。


「ちょっと健人?本当どうしたの」
「ありがとね」
「…ん、」


突然の言葉に少し戸惑いながら返事をすると抱きしめられている力が少し強くなる。


「健人…好きだよ」
「うん」
「あははっ」


私も彼の腰に腕を回すと頭のてっぺんに彼の唇が当たった。



その瞳が好きで、好きで


ふと目線を上げると彼の肩越しに顔を真っ赤に染めて走り去る風早くんが見えた。



(2010.04.01)
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