「あっ、これ可愛い!」
「お、いいじゃん」
休み時間に友達と雑誌をめくりながら話す。ダルい授業の合間の、至福の瞬間。
「いつも思うんだけどさ、限定モノって使わないものでも欲しくならない?」
「あはは、わかる!」
友達も同じ意見で、少し嬉しくなる。
独占欲なのかな、なんて授業が始まってから考えてみた。好きなことを考えてれば授業もすぐ終わる。
でも今は4時間目で、考えごとよりも睡魔が勝ってしまう。先生が黒板に書く文字なんて全然頭に入るわけもなくて、気づいたら軽い眠りについていた。
「ちょっと!授業終わってるけど」
起きたのはもう昼休みだった。
「あー…ごめん、私寝て来るわ。お弁当、食べてて」
「ちょっと!」
お弁当を手に起こしに来てくれた友達には悪いけど、私は屋上で寝ることを選択した。
◇
「んー、気持ちいー!」
屋上に着いて大きく伸びをすると、明るい太陽が私を包む。ちょうどいい場所に寝転ぶと、ガシャン、と屋上のドアが開いた音がした。
起き上がって振り返ってみるけど、逆光で男子生徒だというくらいしかわからなかった。
「なまえ!」
「その声…風早?」
うん、と言いながら彼は私に姿を現した。
「どうしたの、こんなとこに」
「なまえこそ。いつもは教室にいるじゃん」
「まあね。今日は眠くて、特別」
私が笑って言うと、彼も微笑んだ。
「隣、座ってもいい?」
「どうぞ」
「さんきゅ、」
そう言って、ストンと隣に座る。
「さっき、雑誌見ながら盛り上がってたね」
「あ、見てた?雑誌見るの好きだからさ」
「限定モノ、好きなの?」
彼の質問にまあね、と答えるとそっか、と返ってきた。
「男子は限定モノとか興味ないの?」
「…あのさ、なまえ」
彼は私の質問は無視して、急に真面目な口調になった。
「もし、俺が限定モノだったら、好きになってくれる?」
「…は?」
「俺も限定モノになるから!…そしたら、好きになってくれる?」
真っ赤になって聞いてくる彼に私は目を丸くする。少しの沈黙の後、意味がわかった私はぷっと吹き出してしまった。
「それ、告白してるの?」
「い…一応」
「あははは!ありがと」
笑いすぎて少し出た涙を人差し指で拭ってから、私は彼に向き直った。
「限定モノじゃなくても、好きだよ」
俯いていた彼が顔を上げると、私とバッチリ目が合う。
「…本当に?」
「嘘なんかつかないよ」
「うわ…よかったぁー…」
気の抜けたように微笑む彼の笑顔はいつもより綺麗で、私も嬉しくなった。
見てるのは太陽だけ「期間限定とか言ったら怒るよ?」
「言わねーよ!」
(2010.03.28)
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