「はぁ!?あんたピンが好きなの?」
「やめなよ〜あんなやつ」


あやねとちづが口々に言う。今は放課後で、4人でガールズトーク中。私の好きな人を明かした途端、この反応。


「だって好きなもんはしょうがないじゃん」
「うーん、あんたがそれでいいならいいんだけどさぁ」


眉を寄せて言うあやねはなんだかんだ言って私のことを思ってくれてるんだと思う。そこまで言われるとちょっと悲しくなるけど。


「わ、私はっ、いいと思います」


苦笑いしている私に真っ赤になりながら言ったのは爽子だ。


「爽子…ありがとうっ!そうだよね、うん、なんか勇気出た!」


私は爽子に抱き着きながら言う。


「しょうがない!親友の恋なんだ、応援しようじゃないか!」


なんて言いながら私と爽子に抱き着くのはもちろんちづ。
はぁ、とため息をつきながらも優しい目線をしているあやね。

この恋のおかげで友情が深まった気がして、私は嬉しくなって。これだけ思ってもらったら恋も成功したいって思って。



「よし、頑張るよ私!」


カタン、と椅子から立ち上がる。頑張れ!と3人から親指を立てられ私は教室から出た。





とは言っても。
何にも考えないで飛び出してきてしまった私は途方に暮れた。別に今日告白するつもりはなかったのだ。でもここまで来て告白出来ませんでした、も3人に悪い。グッと手に力を込めて、先生を探しに廊下を走り出す。


「おい、そこの女子!廊下は走るな!」


後ろからかけられたその声を聞いて私は立ち止まった。この声は絶対に、彼だ。好きな人の声を間違えるはずがない。ゆっくりと振り返れば、そこには予想通り、ゆっくりとこっちに向かって歩いてる先生がいた。


「ピン、先生…」
「お?みょうじか。お前が廊下を走るなんて珍しいな」


先生はふっ、と笑って言う。


「何をそんなに急いでるんだ?なんだ、彼氏か?」


ニヤニヤしながら聞いてくる先生に、頭が働かなくなる。心の準備がまだ出来てない。


「え、あ、か、彼氏はいません」
「ん?そうか、じゃあなんだ?そんな急いで」


ちょっと考えるように伏し目がちになった顔を直視した私はもう思考停止状態。


「先生を、探してたんですけど」
「俺?何だよ、早く言えよー」


そう言って一歩私に近寄る先生。


「質問が、あります」
「何だ?」
「か、彼女はいますか?」


先生は大きく目を見開いて、頭をがしがしと掻きながらいねえけど、と呟いた。


「何だよ、その質問」


ほっとしている私に、この問い掛け。自分でもなんでこんな質問したのかわからない。ごまかす言葉が思いつかなくて、一度だけ大きく深呼吸をする。


「先生が、好きです」


ちゃんと目を開けて、先生と目を合わせながら、はっきりと言った。もう言ってしまったからには、逃げられない。放課後だけあって、生徒の声も聞こえない。少しの間の沈黙。その沈黙に耐えられなくて、私は下を向く。


「みょうじ…たぶん分かってると思うけどこれでも俺は先生なんだよ」
「せん、せ…い」


真剣な顔で、この反応。覚悟はしてたはずなのに、もう泣きそうだ。


「先生と生徒の関係で恋をするのはいけないことなんだよ、わかるだろ?」
「はい」


ああ、フラれた。涙が頬を伝うのを感じる。



「――でもな、」


その言葉に続きがあることに驚いて、私は顔を上げる。先生とがっちり目が合う。


「でも、俺は生徒の恋愛を尊重したい」
「ど、どういう意味ですか?」


先生の言っている意味が分からなくて、質問を投げかける。


「どういう意味って…俺は生徒の、みょうじの恋愛を尊重すんだよ。つまり…」


先生は私の隣に立って、手を私の頭の上に乗せる。


「俺もおまえが好き、ってこと」


ちょっと屈んでニッと笑った先生に私は顔を真っ赤にして、また涙を流した。


「お、おい、」
「これは、嬉し泣きです…」


先生はスッと指で涙を拭ってくれた。ふと目が合うと優しく頭を撫でてくれて、ぽすん、と先生の胸の中に収まる。


「泣け泣け!気の済むまで!ここはおまえ専用だからな!」


ははっと笑う先生。それでもその大きい手は私の頭を撫で続けてくれていて。もっともっと、先生が大好きになる。


「ありがとうございます」


泣き止んで、少し惜しいけど先生から離れる。


「あーでも、これからは学校でこういうのはナシだからな」
「はい、わかってます」
「こういうことは、俺の家に来ればいくらでもしてやるから。それと、2人の時は一市な」


ニカッと笑う先生にまた顔が赤くなる。はい、と元気よく返事をすると頭をぐしゃっとされた。



「うん、よかったよかったあ〜」
「げっ、おまえら…どっから見てた?」
「もちろん、最初からよ」


気づいたら、ちづとあやね、それに爽子が。先生と2人がじゃれてるのを見てるとほんわかした気分になる。よく見ると先生の顔は赤く染まっていて、私は嬉しくなった。


放課後プロローグ


「なまえ!こいつら連れてけ!」

なんて私に助けを求める姿にも、胸がキュンとなった。
(しかも下の名前になってるの!)


(2010.03.22)
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